介護と地震 親子の防災体験談

防災テクニック
  1. 【防災の新常識】「逃げる」より「支える」避難へ!要介護の母と娘が体験した大地震、その時本当に役立った備えと地域との絆
  2. 他人事ではない、介護と防災の現実
  3. 「ママ、揺れてる!」突然の激震、試される親子の絆
  4. 揺れがおさまったあと、迫られる決断と見えない不安
  5. 【要介護者の避難で“最初に考えること”~パニックにならず、最適な行動を選ぶために~】
    1. ✅ 車いすが必要?担ぐ?それとも…?移動手段を具体的に考える
    2. ✅ 抱えて運ぶ場合、自分の体力も冷静に計算に入れる
    3. ✅ 福祉避難所の場所、事前に把握していますか?
    4. ✅ 時には「避難しない」という判断をするケースも
  6. 防災リュックの中に、母の命。小さな袋に込められた想い
    1. 👜母の命を守る防災リュックの中身
  7. 【高齢・要介護者のための防災リュック徹底解説!~“もしも”に備える命のリスト~】
    1. ✅ 服用中の薬と「お薬手帳」、そして服用スケジュール表
    2. ✅ 排泄ケア用品・介護ケア用品は多めに、そして使い慣れたものを
    3. ✅ 食べ慣れたやわらかめの食品、水分補給ゼリーなど、個々の状態に合わせた食料
    4. ✅ 本人の状態がわかるメモ(プロフィールカード)~情報の精度が命を救う~
    5. ✅ 一番大切なのは“自分以外の誰が見てもわかること”~情報をデザインする意識~
  8. 避難所は「安心」じゃなかった。過酷な現実と母への想い
  9. 【要介護者にとっての避難所のリアルと対策~“知っておく”だけで変わる選択肢~】
    1. ✅ 通常の避難所はバリアフリー対応されていないことも多い~理想と現実のギャップ~
    2. ✅ 「福祉避難スペース」または「福祉避難所」があるか事前に市町村に確認~より専門的なケアを求めて~
    3. ✅ 「避難行動要支援者名簿」に登録するとサポートが受けやすい~“見守り”のネットワークを~
  10. 「1人で守らない」防災。地域との連携が母を救った
  11. 【家族だけで抱えないために!今すぐできる連携と備え~“つながる力”が最大の防災~】
    1. ✅ 担当のケアマネージャーと避難計画を具体的に話し合う~専門家との“共助”計画~
    2. ✅ 地域の防災訓練には積極的に参加する~顔の見える関係づくり~
    3. ✅ 近所の人に“もしもの時”の声かけをお願いしておく~日常からの“ゆるやかな連携”~
    4. ✅ 民間施設(ホテルや福祉施設)の一時避難プランも視野に入れる~多様な選択肢を持つ~
  12. あなたと大切な人の未来のために、今日からできること
    1. あなたは一人じゃない。
  13. ✅【安心こちゃんとLINEで友達になりませんか?】
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  15. ✅YouTube・ブログ収益の一部を、日本赤十字社に寄付しています。

【防災の新常識】「逃げる」より「支える」避難へ!要介護の母と娘が体験した大地震、その時本当に役立った備えと地域との絆

「もしも今、大きな地震が来たら…」そう考えたことはありますか?そして、もしあなたの隣に、助けが必要な大切な家族がいたら…?「自分だけなら何とかなる」そう思っていても、現実は想像以上に厳しいかもしれません。

特に、病気の方、小さなお子さん、そして介護が必要なご高齢の方々と共に災害に立ち向かう時、「逃げる」という一見単純な行動が、いかに困難を伴うか。今回は、要介護の親御さんと一緒に避難する際のリアルな困難と、本当に必要な“気づく備え”とは何かを、ある親子の実体験を通してお届けします。この物語は、決して他人事ではありません。あなたと、あなたの大切な人の未来のために、ぜひ最後までお読みいただき、共に考えるきっかけとしてください。

他人事ではない、介護と防災の現実

私たちの日常は、時に予期せぬ出来事によって一変します。特に日本のような地震大国では、災害は常に身近な脅威です。しかし、その脅威は全ての人に平等に訪れるわけではありません。「逃げよう」と思っても、すぐに、そして簡単には一緒に逃げられない人々がいます。それは、病気を抱える方、幼い子どもたち、そして介護を必要とする高齢の方々です。

この物語の主人公である智子さん一家も、そんな現実と向き合うことになります。彼女の体験を通して、私たちは要介護者を抱える家族が直面する避難の難しさ、そして、いかに日頃の備えと周囲との連携が重要であるかを痛感させられます。これは単なる物語ではなく、私たち一人ひとりがいつ直面するかもしれない未来の姿です。大切な人を守るために、今日、この記事で“気づく備え”を始めましょう。

「ママ、揺れてる!」突然の激震、試される親子の絆

穏やかな午後、智子さん(42歳・娘)がリビングで家事をしていると、微かな揺れを感じます。「…ん?…気のせいかな…」。しかし、その予感はすぐに確信に変わります。

息子・翔太くん(10歳)の声が響きます。「ママ…なんか揺れてない?」。ほぼ同時に、智子さんのスマホがけたたましく緊急地震速報を鳴らし始めました。「え…?うそ…!また地震!?この前のより…大きい…!」。

ガタガタガタ!次の瞬間、家は激しい揺れに見舞われ、物が落ち、ガラスが割れるような音が響き渡ります。「うわぁっ!ママっ!テレビが倒れそうっ!本棚もっ!」と叫ぶ翔太くんに、智子さんは「翔太!机の下に隠れて!頭を守って!」と必死に指示を出します。

その時、隣の和室から苦しそうな声が聞こえました。母・節子さん(77歳・要介護3)です。「トモちゃん…!トモちゃーん…!揺れてる…すごく揺れてるよぉ…怖い…!助けて…立てない…!」。

智子さん一家は、夫と、小学生の息子・翔太くん、そして母・節子さんの3世代で暮らしています。節子さんは3年前に脳梗塞を患い、現在は要介護3。日常生活の多くに介助が必要で、ベッドから車いすへの移動も、一人では難しい状態です。

「翔太!大丈夫!?おばあちゃんの部屋に行くから、動かないで!」智子さんは翔太くんの安全を確認しつつ、節子さんの部屋へ駆け寄ります。「お母さん!今行くから!大丈夫だからね!」。節子さんの部屋では、ベッドの上で布団をかぶり、怯えて震えている母の姿がありました。部屋の中は物が散乱し、危険な状態です。

「お母さん!大丈夫!?怪我はない?」。節子さんは「トモちゃん…怖かった…まだ揺れてる…どうしよう…」と弱々しく訴えます。「翔太!そこのクッション持ってきて!ばあばの頭、守ってあげて!」と指示し、翔太くんはすぐにクッションを節子さんの頭の周りに置きました。「ばあば、大きく息して。大丈夫、私がいるから。揺れが収まるまで、動かないでね。ママ、すぐ抱えるから!」。

“逃げる”という言葉は簡単です。しかし、その行動がどれほど難しいことか。自力で安全な場所へ避念できない人がいるという現実を、私たちは決して忘れてはいけません。この瞬間、智子さんの頭の中は、「どうやって母を安全な場所へ…」その一点でいっぱいでした。それは、日頃から介護に携わる家族だからこその、切実な思いだったのです。

揺れがおさまったあと、迫られる決断と見えない不安

長く感じられた激しい揺れがようやく収束した後、智子さんのスマートフォンに「緊急避難指示」の通知が届きました。近隣で土砂災害の危険性が高まっているというのです。「(スマホを見て青ざめる)…土砂災害の危険…避難指示が出てる…このままじゃダメだ…」。窓の外の空は、雨は降っていないものの、不穏な様相を呈しています。

しかし、すぐに問題が立ちはだかります。「でも、お母さん…どうやって運ぶ…?車いすは…この揺れで玄関まで行けるかしら…」。節子さんは、そんな智子さんの不安を察したのか、か細い声で言いました。「トモちゃん…私はいいよ。私はもう、ここにいるから…。翔太を連れて、早く、安全なところに…!」。

「だめ!そんなの絶対に無理!お母さん、何言ってるの!3人で一緒に行くの!絶対に!」。翔太くんも「そうだよ、ばあば!一緒じゃなきゃヤダ!」と続きます。家族だからこその、お互いを思いやる言葉。しかし、今は一刻を争う状況です。智子さんは、以前、市の防災講座で聞いた「要介護者の避難」について必死に思い出そうとしていました。

【要介護者の避難で“最初に考えること”~パニックにならず、最適な行動を選ぶために~】

もし、あなたの大切な方が介護を必要とされている場合、避難が必要になった時、まず何を考えますか?パニックにならず、落ち着いて状況を判断するために、事前に知っておいてほしいことがあります。

  • ✅ 車いすが必要?担ぐ?それとも…?移動手段を具体的に考える

    • 解説: 普段使っている車いすが使える状況か、がれきや段差で経路が遮断されていないか、まず確認しましょう。もし使えない場合、どうやって移動するか。例えば、毛布やシーツ、丈夫なレジャーシートを使って簡易的な担架のようにして運ぶ方法、あるいは、背負って避難する方法(おんぶ紐や専用の搬送具があればより安全です)もあります。重要なのは、複数の選択肢を想定し、可能であれば事前に家族や支援者と練習しておくことです。 どのような状況でどの手段が最適か、シミュレーションしておくことで、いざという時の判断が早まります。
  • ✅ 抱えて運ぶ場合、自分の体力も冷静に計算に入れる

    • 解説: 大切な人を運びたい一心で、自分の限界を超えて無理をしてしまうことがあります。しかし、避難の途中で共倒れになってしまっては元も子もありません。ご自身の体力、避難場所までの距離、道のりの状況(坂道、階段、障害物の有無など)を冷静に考慮し、安全に運べる方法を選びましょう。場合によっては、無理に自力で運ぼうとせず、近所の方や救助隊の助けを待つという判断も、勇気ある重要な決断です。 日頃から、誰に助けを求められるか、地域の支援体制についても情報を集めておくと良いでしょう。
  • ✅ 福祉避難所の場所、事前に把握していますか?

    • 解説: 一般の避難所(学校の体育館や公民館など)では、高齢者や障害のある方が過ごしにくい場合があります。段差が多かったり、プライバシーの確保が難しかったり、専門的なケアが受けられなかったりするためです。そんな方々のために「福祉避難所」という場所があります。これは、バリアフリー設備が整っていたり、専門のスタッフ(看護師や介護福祉士など)がいたりする避難所のこと。どこにあるのか、どうすれば利用できるのか(受け入れ条件や手続きなど)、事前に市町村の福祉担当課や地域包括支援センター、ケアマネージャーさんに確認しておくことが極めて重要です。 ただし、福祉避難所は受け入れ人数に限りがある場合も多いので、その点も理解しておく必要があります。
  • ✅ 時には「避難しない」という判断をするケースも

    • 解説: 「えっ、避難しないの?」と思われるかもしれません。しかし、例えば、自宅が耐震基準を満たした頑丈な建物で、浸水や土砂災害の危険性が極めて低い場所にあり、ライフラインも確保できる見込みがある場合、無理に移動することでかえって危険が増すこともあります。特に、人工呼吸器や経管栄養など、医療ケアが常に必要な方などは、設備の整った在宅での避難(在宅避難)の方が安全な場合があります。これも、事前に医師やケアマネージャー、地域の防災担当者など専門家と十分に相談し、個別の状況に応じた避難計画を立てておくことが重要です。

智子さんは、押し入れから防災リュックを取り出しました。「いつかのために、って準備してたリュック…お母さんの分と、私たちの分…ちゃんと入ってるかな、お薬も…おむつも…」。不安と焦りの中で、智子さんは、震える手で母のための防災リュックを開けました。

防災リュックの中に、母の命。小さな袋に込められた想い

避難所へ行く決心をした智子さん。まず取り出したのは、この日のために母・節子さんのために特別に用意していた防災リュックでした。それは、単なる荷物ではなく、母の「命」そのものが詰まっていると言っても過言ではありません。智子さんがリュックの中身を一つ一つ確認していく様子を、節子さんと翔太くんが心配そうに見守ります。

👜母の命を守る防災リュックの中身

  • 血圧の薬、心臓の薬: それぞれ3日分…いや、少し多めに1週間分は入れたはず。
    • 智子(心の声): 「先生に相談して、災害時用に少し多めにもらっておいたもの…よかった…。予備があるだけで心の余裕が違うわ。」
  • 服用スケジュールのメモ: いつ、どの薬を飲むか、誰が見てもわかるように大きく書いてある。
    • 智子(心の声): 「私がいなくても、誰かが見ればわかるように…ってケアマネさんがアドバイスくれたんだった。時間ごとに色分けもしておいた。」
  • 大人用おむつ: 普段使っているものと同じサイズを3枚…いや、念のため5枚は入ってる。
    • 智子(心の声): 「避難所ではなかなか手に入らないかもしれないから…吸収量が多いタイプも入れておいて正解だったかも。」
  • 介護用ウェットティッシュ、からだふきシート:
    • 智子(心の声): 「お風呂に入れない状況でも、少しでも清潔に…感染症予防にもなるし、お母さんの気分転換にもなるかもしれない。」
  • 母が好きなカロリーメイト(りんご味)、喉ごしの良いゼリー飲料:
    • 節子(かすかに笑顔): 「あら、これ…好きなのよ…」
    • 智子: 「うん、お母さんの好きなもの、入れといたよ。少しでも元気出るようにね。食欲がない時でも、これなら食べられると思って。」
  • そして、一番大切な「節子(母)プロフィールカード」: ラミネート加工してある。
    • 詳細: 名前、年齢、生年月日、血液型、要介護度、既往症(高血圧、心疾患、脳梗塞後遺症)、アレルギーの有無(食物、薬剤など)、飲んでいる薬の名前と量、1日の服用タイミング、かかりつけ医の連絡先、緊急連絡先として智子さんの携帯番号と、遠方に住む弟さんの連絡先まで詳しく書かれています。節子さんの顔写真も貼付。
    • 智子(心の声): 「これがあれば、もし私とはぐれたり、私が動けなくなったりしても、お母さんのことを誰かに正確に伝えられる…!ケアマネさんにも見てもらって、必要な情報を網羅したつもり。」

「よし、大丈夫。ちゃんと入ってる。お母さん、少しの間、我慢してね。翔太、おばあちゃんの手、握っててあげて。行こう」。節子さんは「トモちゃん…ありがとうねぇ…本当に、本当にありがとう…迷惑かけるねぇ…」と涙ぐみます。「迷惑なんかじゃないよ!家族なんだから、当たり前でしょ!さ、ゆっくり行くよ。」。

智子さんは節子さんをおんぶし、翔太くんがその横で節子さんの手を握り、もう片方の手で小さなリュックを背負い、3人はゆっくりと、しかし確実な一歩を踏み出しました。この防災リュック一つにも、日頃からの準備と母への深い愛情が詰まっていたのです。

【高齢・要介護者のための防災リュック徹底解説!~“もしも”に備える命のリスト~】

智子さんが準備していた防災リュック、本当に素晴らしかったですね。特に要介護の方や高齢の方のリュックには、入れておくと安心なものがいくつかあります。もう一度、ポイントを押さえておきましょう。より具体的に、そして一歩踏み込んで解説します。

  • ✅ 服用中の薬と「お薬手帳」、そして服用スケジュール表

    • 深掘り解説: 薬は文字通り命綱です。最低でも3日分、できれば1週間分以上あると安心です。災害時は医療機関も混乱し、すぐに薬が手に入るとは限りません。普段から飲んでいる薬がわかる**「お薬手帳」のコピーは必須。原本を持ち出すのが難しい場合は、最新ページのコピーやスマホで写真を撮っておくだけでも役立ちます。** 服用時間や量を書いたメモ(服用スケジュール表)は、ご本人以外の方が介助する場合に非常に役立ちます。薬の効能や副作用、アレルギー情報なども書き添えておくと、より専門的な支援を受けやすくなります。
  • ✅ 排泄ケア用品・介護ケア用品は多めに、そして使い慣れたものを

    • 深掘り解説: 大人用おむつ、尿取りパッド、使い捨て手袋、清拭剤、ウェットティッシュ、からだふきシート、ビニール袋(汚物処理用、防臭タイプも便利)、トイレットペーパー(芯を抜くとコンパクトに)などですね。避難所では衛生環境が悪化しやすいため、清潔を保つためのアイテムは非常に重要です。特に、普段使っているもの、使い慣れたものを選ぶと、ご本人のストレスも軽減できます。 サイズが変わったり、肌触りが違うだけで不快感が増すこともあります。消臭スプレーや、陰部洗浄用のボトルなども準備できると、より快適に過ごせます。
  • ✅ 食べ慣れたやわらかめの食品、水分補給ゼリーなど、個々の状態に合わせた食料

    • 深掘り解説: 避難所での配給は、必ずしも高齢者向けとは限りません。乾パンやアルファ米なども、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)が難しい方には不向きなことがあります。普段から食べ慣れているもの、特に、歯が弱い方でも食べやすいレトルトのお粥(温めなくても食べられるタイプ)、介護用のバランス栄養食、刻み食やミキサー食が必要な方はその準備も。水分補給用の経口補水液やゼリー飲料なども有効です。**お母さんの好きだったカロリーメイト、良いチョイスでしたね。精神的な安定にも繋がります。**アレルギー対応食が必要な方は、その備蓄も忘れずに。
  • ✅ 本人の状態がわかるメモ(プロフィールカード)~情報の精度が命を救う~

    • 深掘り解説: 智子さんが作っていた「節子さんプロフィールカード」、あれは本当に素晴らしいアイデアです!持病、要介護度、アレルギー(食物、薬剤、その他)、緊急連絡先(複数)、かかりつけ医(病院名、電話番号、担当医名)、普段の様子で気をつけること(例:右半身麻痺あり、大きな声でゆっくり話しかけてほしい、など)を具体的に書いておきましょう。ご本人が話せない状況でも、的確なサポートを受けるために不可欠です。 写真も貼っておくと、万が一はぐれた時の捜索にも役立ちます。可能であれば、このカードのコピーを複数用意し、本人、家族、支援者などがそれぞれ持っておくとさらに安心です。
  • ✅ 一番大切なのは“自分以外の誰が見てもわかること”~情報をデザインする意識~

    • 深掘り解説: これが最大のポイントです。介助する人がいつもご家族とは限りません。避難所では、ボランティアの方や他の避難者の方がサポートしてくれることもあります。誰が見ても、その方に必要なケアがわかるように、情報を整理しておくことが、いざという時に本当に役立ちます。文字を大きく書く、重要な箇所は太字や赤字にする、イラストやピクトグラムを活用するなどの工夫も良いですね。 例えば、薬の袋に飲む時間をマジックで大きく書いたり、アレルギーのある食べ物の絵に×印をつけたりするだけでも、伝わりやすさが格段に向上します。

避難所は「安心」じゃなかった。過酷な現実と母への想い

多くの困難を乗り越え、智子さんたちがたどり着いたのは、指定された避難所である小学校の体育館でした。しかし、そこは、智子さんが思い描いていた「安心できる場所」ではありませんでした。

体育館の中は、人でごった返しています。床に直接毛布を敷いて座り込む人、不安そうに寄り添う家族。隅の方で、同じように車いすの高齢者や、小さな子供を連れた母親たちが困惑した表情を浮かべています。

「(息を切らしながら、節子さんをゆっくりと床に降ろそうとする)お母さん、やっと着いたよ…でも…」。智子さんは言葉を失います。「(見渡して)え…?マットの上に直接寝るの!?お母さん、床ずれとか…大丈夫かしら…これじゃあ身体が痛くなっちゃう…」。節子さんも「(顔をしかめて)床が硬いねぇ…それに、なんだか寒いよ…風がスースーする…」と辛そうです。

翔太くんが「ママ、あっちにも車いすのおじいちゃんがいるよ。でも、みんななんだか困ってるみたい…」と声をかけます。智子さんは周囲を見渡し、唖然としました。「車いすの人がいっぱいいる…杖をついたおばあさんも…。けど、仕切りも何もないし、プライバシーなんてあったものじゃないわ…。これじゃあ、お母さんのおむつ交換もどうしたら…」。

体育館の床は冷たく硬く、多くの人がひしめき合っていました。暖房も十分ではなく、衛生環境も良いとは言えません。要介護者や高齢者にとっては、あまりにも過酷な環境。智子さんは、このままでは母の体調が悪化してしまうと強い危機感を覚えました。「安心」を求めて来たはずの避難所が、新たな試練の場となってしまったのです。

【要介護者にとっての避難所のリアルと対策~“知っておく”だけで変わる選択肢~】

智子さんたちが直面した状況、本当に胸が痛みますね。でも、これは特別なことではないんです。多くの一般避難所では、どうしてもこのような課題が出てきてしまいます。だからこそ、事前に知っておくべきことがあります。

  • ✅ 通常の避難所はバリアフリー対応されていないことも多い~理想と現実のギャップ~

    • 深掘り解説: 学校の体育館や公民館などが指定避難所になることが多いですが、これらは元々、災害時の長期滞在を想定して作られた施設ではありません。そのため、バリアフリー設計になっていない場所も少なくありません。段差があったり、トイレが和式のみだったり、スロープがなかったり、床が硬かったり、空調が十分でなかったり…。 要介護の方にとっては、生活すること自体が大きな負担になってしまうのです。避難前に、指定避難所の設備について、可能な範囲で情報を集めておくことも重要です。
  • ✅ 「福祉避難スペース」または「福祉避難所」があるか事前に市町村に確認~より専門的なケアを求めて~

    • 深掘り解説: 先ほども少し触れましたが、高齢の方や障害のある方、妊産婦さん、乳幼児連れの方など、特に配慮が必要な方々のために、『福祉避難スペース』(一般避難所内に設けられる、間仕切りや簡易ベッドなどで配慮された区画)や、社会福祉施設などを活用した専門の『福祉避難所』が用意されている場合があります。福祉避難所では、介護職員や看護職員が配置されたり、相談支援が受けられたりすることもあります。 どこにあって、どうすれば利用できるのか(対象者、受け入れのタイミング、申請方法など)、事前に必ずお住まいの市町村の福祉担当課や地域包括支援センター、ケアマネージャーさんに確認しておきましょう。 ただし、福祉避難所は受け入れ人数に限りがある場合が多く、災害発生直後からすぐに開設されるとは限らないこと、また、原則として直接避難する場所ではなく、一般避難所での生活が困難な方が状況に応じて移る二次的な避難所であることが多い点も覚えておいてください。
  • ✅ 「避難行動要支援者名簿」に登録するとサポートが受けやすい~“見守り”のネットワークを~

    • 深掘り解説: これは非常に重要な制度です。『避難行動要支援者名簿』とは、災害時に自力で避難することが難しい高齢者や障害者などの方々の名簿で、市町村が作成しています(「災害時要援護者名簿」など名称が異なる場合もあります)。この名簿に登録しておくと、平常時から民生委員や自主防災組織などの避難支援等関係者に情報が提供され(本人の同意が必要)、災害発生時には安否確認や避難誘導、情報伝達などの支援を受けやすくなることがあります。 また、平常時から地域の方々との繋がりができ、いざという時の助け合いに繋がることも。登録には本人の同意が必要ですので、ぜひ一度、市町村の窓口(福祉課や防災課など)に相談してみてください。どのような情報が誰に提供されるのか、プライバシーの保護についても確認しておくと安心です。

智子さんは、このままではいけないと、震える手でスマホを取り出し、区役所の福祉課に電話をかけました。「要介護3の母が、今、○○小学校の体育館に避難していますが、ここの環境では母が過ごすのが非常に困難です。何とかなりませんか…!」と必死に訴えました。数分後、折り返しの電話が。それは、地域包括支援センターの職員からでした。事情を把握したセンターの職員が、近隣の福祉施設が臨時で開設している「福祉避難所」に空きがあることを探し出してくれたのです。そこには、簡易ベッドや間仕切りがあり、看護師も待機しているとのことでした。

「(電話を切り、涙ぐみながら)お母さん…!よかった…!もう少しだけ頑張って。もっとちゃんとした場所が見つかったから…!ベッドもあるって!」。節子さんは「(智子の手を取り)うん、うん…トモちゃんがいれば、がんばれるよ…ありがとうねぇ…」。翔太くんも「やったー!ばあば、よかったね!」と喜びました。たった一本の電話。しかしそれは、母の命と尊厳を守るための、智子さんの諦めない行動が生んだ希望の光でした。

「1人で守らない」防災。地域との連携が母を救った

地域包括支援センターの職員の手配で、智子さんたちは福祉避難所へと移動することができました。そこは、体育館とは全く違う環境でした。簡易ベッドが並び、カーテンのようなもので最低限のプライバシーが保たれています。看護師や介護士らしきスタッフが巡回しており、節子さんがベッドに横になり、安堵の表情を浮かべています。

「(節子さんの額の汗を拭いながら)お母さん、どう?さっきよりずっと楽でしょう?」。節子さんは「うん…あったかいし、柔らかい…やっと、安心して眠れそうだよ…本当にありがとう…」と穏やかに答えます。「安心して眠れる」——ただそれだけのことが、どれだけ救いになるか。智子さんは、母の穏やかな寝顔を見ながら、これまでの緊張が一気に解けていくのを感じました。

そして同時に、もっと早く誰かに頼るべきだった、という後悔にも似た思いがこみ上げてきました。「(独り言のように)もっと早く、ケアマネさんや地域包括支援センターの人に、災害時のこともちゃんと相談しておけばよかった…。“全部自分で守らなきゃ”“私がお母さんを支えなきゃ”って、どこかで気負ってたのかもしれない…でも、違ったんだな…一人でできることなんて、限られてるんだ…」。この経験は、智子さんにとって大きな気づきとなりました。

【家族だけで抱えないために!今すぐできる連携と備え~“つながる力”が最大の防災~】

智子さん、本当に大変でしたね。でも、大切な気づきを得られたようです。そうなんです、要介護者を守る防災は、“ひとりのがんばり”に頼るものではありません。まわりの力を上手に借りることが、実は一番の備えになるんですよ。では、具体的にどんなことができるでしょうか。

  • ✅ 担当のケアマネージャーと避難計画を具体的に話し合う~専門家との“共助”計画~

    • 深掘り解説: まずは、日頃からお世話になっているケアマネージャーさんに相談しましょう。災害時の避難について、ご本人の心身の状態や住環境、家族の状況などを踏まえ、どんな支援が必要か、どんなリスクが考えられるか、福祉避難所の情報、必要な物品のリストアップなど、専門的なアドバイスをもらえます。 一緒に具体的な避難計画(個別避難計画)を立てておくと、いざという時に慌てずに行動できます。この計画は定期的に見直し、状況の変化に合わせて更新していくことが大切です。
  • ✅ 地域の防災訓練には積極的に参加する~顔の見える関係づくり~

    • 深掘り解説: お住まいの地域で行われる防災訓練、参加したことありますか?訓練では、避難経路の確認や、消火訓練、救護訓練などに加え、要支援者の避難サポート訓練や情報伝達訓練などが行われることもあります。 参加することで、地域の地理や危険箇所を把握できるだけでなく、顔見知りを増やし、「うちはこういう状況なので、もしもの時はお願いします」と一声かけておくだけでも、いざという時の助け合いに繋がります。 地域の自主防災組織の活動にも関心を持つと良いでしょう。
  • ✅ 近所の人に“もしもの時”の声かけをお願いしておく~日常からの“ゆるやかな連携”~

    • 深掘り解説: 日頃からご近所付き合いを大切にすることも、立派な防災です。挨拶を交わす、地域のイベントに参加するなど、小さなことの積み重ねが信頼関係を育みます。特に、民生委員さんや町内会長さん、信頼できるご近所の方など、地域のキーパーソンには、家族構成や要介護の状況(可能な範囲で)を伝えておくと、災害時に気にかけてもらいやすくなります。 「何かあったら、お互い様で助け合いましょうね」という関係づくりが大切です。無理強いするのではなく、あくまで「もしよかったら」というスタンスで、日頃からコミュニケーションを取っておくことがポイントです。
  • ✅ 民間施設(ホテルや福祉施設)の一時避難プランも視野に入れる~多様な選択肢を持つ~

    • 深掘り解説: 最近では、災害時に要配慮者を受け入れてくれるホテルや、短期入所(ショートステイ)の契約をしている福祉施設なども増えてきています。これらは公的な避難所とは異なり費用は掛かるかもしれませんが、より快適で安全な環境を早期に確保するための一つの選択肢として、事前に情報を集め、利用条件や予約方法などを確認しておくのも良いでしょう。 特に感染症が流行している時期などは、個室を確保できるメリットも大きいです。

要介護者を守る防災は、“ひとりのがんばり”ではなく、地域や専門機関、そして周りの人々の力を借りること。それが、智子さん親子が経験から学んだ、一番大切な「備え」だったのです。そしてそれは、特別なことではなく、日頃からのちょっとした心がけと準備で、誰にでもできることなのかもしれません。

あなたと大切な人の未来のために、今日からできること

皆さん、今回の智子さん親子の物語、いかがでしたか?地震という突然の災害の中で、要介護のお母様と一緒に避難するということが、どれほど大変で、そして何が必要なのか、少しでも感じていただけたでしょうか。

(智子さん、節子さん、翔太くんが、福祉避難所で少しだけ笑顔を取り戻しているイメージ)

要介護の親御さんと一緒に避難する。それは、単に「逃げる」ということ以上に、「守る」「支える」そして「寄り添う」ことなのだと、改めて教えられます。そして、何よりも大切なのは——この物語を通して繰り返しお伝えしてきたように、“あなたひとりで抱えこまないこと” です。

あなたは一人じゃない。

普段から、家族としっかり話し合っておくこと。かかりつけ医やケアマネージャーさん、地域包括支援センターといった専門家の方々に相談しておくこと。そして、ご近所の方々と「いざという時は助け合おうね」という関係を築いておくこと。

今日この記事で、もし、ひとつでも「あ、これはやっておこうかな」「うちも相談してみようかな」という気づきがあったなら、ぜひ、今日、明日からでも行動に移してみてください。まずは、ご家族とこの記事の内容について話し合ってみることから始めてみませんか?「もしうちで同じことが起きたら、どうしようか?」と。その小さな一歩が、あなたと、あなたの大切な人の命を未来に繋げる、大きな力になるはずです。

今日の情報が少しでも役に立った、共感した、と思っていただけたら幸いです。あなたの備えが、明日の誰かの命を救うかもしれません。

自分の命は自分で守る。そして、大切な人の命も、社会全体で支え合う。 そのために、一緒に防災について考え、行動していきましょう。


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