それ、命の通り道をふさいでいませんか?〜母と私が手放した“思い出の箱”の話〜
「あれ…これ、昔おばあちゃんがくれたやつだよね。もう使ってないけど…捨てられないな…」
そうつぶやいたのは、私の母、77歳。
実家の押し入れを一緒に整理していたある日、奥から出てきたのは色あせた布に包まれた、古い裁縫箱でした。開けると中には、使われなくなった針山や、ほつれた糸巻きがぎゅうぎゅうに詰まっていて…。
「これはね、あんたが小学生のとき、ボタンが取れて泣いてたでしょう?その時、夜中に直してあげたのよ。懐かしいなあ…」
母の目には涙が浮かんでいました。
でも私は、その箱を見て、もうひとつの“もしも”を想像してしまったのです。
もし、この押し入れの前で地震が起きたら? もし、この裁縫箱が落ちて母の足をすくったら? もし、この場所が避難経路だったとしたら?
「断捨離」は、思い出を捨てることではありません
防災って、何か特別なことのように思われがちです。 でも実は、家の中を「今、命を守れる空間にすること」こそが、防災のはじまりなんです。
例えば…
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流しの上に、洗ったままの鍋を積み重ねていませんか?
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寝室に、大きな本棚を置いたままにしていませんか?
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通路や出入り口に、使っていない家具や段ボールが積んでありませんか?
それ、全部「命の通り道」をふさいでいるんです。
私たちは地震が起きた瞬間、1秒でも早く安全な場所へ移動しなければなりません。だけど物があふれていたら、その1秒が遠ざかってしまいます。
「必要なものが、必要な時に、すぐに手に取れる家」
それを作るために、断捨離があるのです。
防災と断捨離は矛盾しない。むしろ“最高のパートナー”です。
「でも、いざという時のために、備蓄品も増やさなきゃでしょ?物を減らすって、備えることと矛盾してない?」
そう思ったあなた、大丈夫。答えは「NO」です。
断捨離で捨てるのは、あくまでも“不要なもの”。 期限切れの非常食や、使えない古い懐中電灯、いつ買ったか分からない電池…。これらを手放すことで、本当に必要なものが分かるようになります。
そして、見直すチャンスにもなります。
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食料や水の期限チェック
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懐中電灯の点灯確認
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家族人数に合った防災セットの再構成
断捨離が、あなたと家族の“いのちを守るためのアップデート”になるのです。
私が母と手放した“裁縫箱”のその後
結局、母はあの裁縫箱を「ありがとう」と言いながら手放しました。
「これで、あんたが無事に逃げられるならいいのよ」 母の言葉が、今でも胸に残っています。
代わりに私たちは、母のベッドのそばに、軽くて安全な収納に非常持ち出し袋を入れました。中には、お守りとして小さな針山をひとつだけ忍ばせて。
思い出は、モノではなく、心の中に生きている。
そう気づいた瞬間、母も私も少しだけ強くなれた気がしました。
今すぐできる!防災に役立つ断捨離の5つのステップ
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避難経路の確保
廊下や出入り口をふさいでいるものを整理・処分 -
「災害時に使えないもの」は潔く手放す
古い家電、不安定な家具、期限切れの食品など -
防災グッズの定期点検と更新
必要最低限・使いやすいものを備える -
収納の見直しで「取り出せる」仕組みを作る
重要なものは1カ所にまとめておく -
心の断捨離
執着や不安も、整理してスッキリと
まとめ
断捨離は「物を減らす」ことではありません。
それは、「命を守る空間を作ること」。 「家族を想う心を形にすること」。
あなたの家は、今すぐ変えられます。 未来の命を守るために、今日から一歩を踏み出しましょう。
「自分の命は自分で守る」——だけど、家族の命も一緒に守るのが、私たちの役目です。
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