高松で地震にあったら|高松駅・栗林公園・こんぴらさんの避難場所

高松駅の改札を出たところで、栗林公園の池のほとりで、こんぴらさんの石段の途中で、大きく揺れた。旅行で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、高松と琴平の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、香川県・高松市・琴平町の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。

結論を先に言います。高松市は「地震発生後、約1時間半程度の避難時間がある」と書き、同じ市が津波避難ビルの一覧に「夜間や休日などの場合は、開錠に1時間程度必要です」と書いています。この2つの数字を並べると、高松ですべきことが決まります。着いてから探すのではなく、着く前に行き先を決めておく街です。

私は防災士として、香川県地震・津波被害想定調査報告書(令和7年9月)、高松市の津波避難ビル一覧(令和8年7月1日現在)と防災マップ、琴平町総合ハザードマップと琴平町地域防災計画(令和8年3月)、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。読み終わる頃には、3つの場所それぞれで最初に向かう先が決まります。

3地点の結論|動くか、待つか

場所 標高 近くの避難場所の対応 揺れが収まったら
高松駅前・高松港 2.0m いちばん近い玉藻公園(約418m)は地震に対応。津波と高潮は対象外 水平に、浸水想定区域から離れる。新番丁小学校(約737m)など地震と津波の両方に対応した場所へ
栗林公園 7.1m 最寄り4か所がすべて地震と津波の両方に対応 園を出て栗林コミュニティセンター(約394m)へ
金刀比羅宮(琴平町) 本宮 233.4m 内陸の町で、津波の指定そのものがない(全件が地震に対応) 下りない。いちばん近い避難場所でも直線約984m・標高68.7m

高松3地点の動き方。高松駅前は浸水想定区域から水平に離れる、栗林公園は周り4か所が地震と津波の両方に対応、こんぴらさんは下りない

標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)、避難場所の対応は国土地理院の指定緊急避難場所データ(高松市分は2026年1月23日更新、琴平町分は2026年2月24日更新)です。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。

高松で想定されている地震|震度7になるのは南海トラフではない

香川県は2025年に被害想定を全面的に作り直しました。第一次公表が令和7年7月1日、第二次公表が令和7年9月2日です。対象は南海トラフ地震(最大クラスと発生頻度の高いもの)、中央構造線断層帯、長尾断層帯の4つ。高松市の最大震度は、南海トラフの最大クラスで6強、中央構造線断層帯で7です。震度7になるのは南海トラフではありません。県全体では、南海トラフ最大クラスで死者 最大 約7,800人。高松市だけを取り出すと、建物の全壊・焼失8,000棟、死者 最大2,300人で、そのうち津波が1,100人です。

高松の津波は、高さは低めで、いちばん高くなるまでが長く、そのあとも長く続くのが特徴です。県の公表値で、高松港の最高津波水位は2.9m。ただし高松市域の最大値は4.2mで、これは別の数字です。駅や港の話をするときは2.9mを使います。そして高松港の玉藻地区(高松駅と高松城の側)で最高水位に達するのは、地震発生から5.7時間後です。報告書には「最高津波水位が発生した後、津波は6時間を過ぎても断続的に襲来し、海面変動は半日経過しても生じる」とあります。

ここで逆の勘違いをしないでください。玉藻地区で海面が動き始めるまでの時間は、17分です。県の図の注記は「実際は、この時間どおりになるとは限りません。揺れがおさまったら、すぐに避難を開始しましょう」。5.7時間は「いちばん高くなる時刻」であって、「来るのが遅い」という意味ではありません。県の浸水面積の想定では、高松市が2,013haで県全体8,020haの約4分の1を占めます。

高松の分かりにくさ|いちばん近い場所が、津波には対応していない

呼び名 何のための場所か 高松での様子
指定緊急避難場所 市町が災害の種類ごとに指定する、命を守るために逃げ込む場所 高松駅にいちばん近い玉藻公園は「地震」と「洪水」。津波と高潮は対象外
津波避難ビル 近くに高台がない区域で、短時間で上へ逃げるための建物 112か所・合計125,866人(令和8年7月1日現在)。駅と港のすぐそばに複数ある
指定避難所 家に戻れない人が生活する場所 市の公表は「指定緊急避難場所・指定避難所」と「津波避難ビル」の2本立て

高松の時間の数字。海面変動の影響開始は17分、避難時間は約1時間半、津波避難ビルの開錠に1時間、最高水位までは5.7時間

高松でいちばん大事なのがここです。高松駅からいちばん近い指定緊急避難場所である玉藻公園(直線約418m)は、対応災害の欄に「津波」も「高潮」も入っていません。揺れの直後に逃げ込む先としては正しい場所です。けれど津波警報が出たら、ここではありません。高松市の呼びかけは「水平方向に、浸水想定区域から離れましょう」。高台より先に、水平移動が書かれています。

津波避難ビルの一覧には、市自身がこう書いています。「夜間や休日などの場合は、開錠に1時間程度必要です。」そして「表に掲載がない地区は、現在のところ指定するビルがありませんので、付近の高台等に避難してください」。避難時間は約1時間半、開錠に1時間。旅行で夜に着いた日は、この2つの数字が重なります。

高松駅前・高松港|海抜2mの街で、どこへ動くか

港の近くの広い通りを、海から離れる方向へ歩く安心こちゃんと旅行者

JR高松駅の標高は2.0m、高松港旅客ターミナル付近が2.8m、高松城跡が2.2m、丸亀町商店街が2.5m、高松市役所が3.3mです。想定されている高松港の津波水位は2.9m。駅前は、想定される水位より低い場所にあります。地震と津波の両方に対応した指定緊急避難場所は、新番丁小学校(約737m・標高2.7m)、四番丁コミュニティセンター(約799m・2.7m)、高松市生涯学習センター まなびCAN(約857m・1.9m)などです。

駅と港のすぐそばには、津波避難ビルもあります。JRホテルクレメント高松(2階共用廊下と3階宴会ロビー・850人)、四国旅客鉄道株式会社本社ビル(8階と屋上・500人)、高松港旅客ターミナルビル(2階・150人)、高松シンボルタワー サンポートホール高松(ホール棟3階ロビー・400人)。商店街まで歩けば、高松丸亀町壱番街駐車場(2階以上・13,100人)があります。泊まっているホテルが、そのまま津波避難ビルになっている場合があります。高台の方向は南で、駅2.0m、市役所3.3m、栗林公園7.1mと上がっていきます。

栗林公園|駅前より5m高い。ただし公園そのものは指定がない

栗林公園の園内中央付近の標高は7.1m、ことでん栗林公園駅の付近が5.5mです。高松駅前より5m高く、想定の津波水位2.9mより明確に上になります。ただし栗林公園そのものは、指定緊急避難場所にも指定避難所にも入っていません。園内の来園者向けの避難の案内も、県のページでは確認できませんでした。ですから「園内で待つ」ではなく「園を出て、指定された場所へ」が正しい動きです。

周りの指定緊急避難場所は、栗林コミュニティセンター(約394m・標高7.7m)、栗林小学校(約549m・6.2m)、高松第一高校(約781m・5.8m)、桜町中学校(約839m・6.2m)。この4か所は、すべて地震と津波の両方に対応しています。駅前は「近い場所が津波に対応していない」、栗林は「近い場所がすべて対応している」。泊まる場所によって、覚えることが変わります。

金刀比羅宮|石段の途中で揺れたら、下りない

金刀比羅宮の本宮付近の標高は233.4m、大門の付近が143.6m、JR琴平駅の付近が69.5m、ことでん琴平駅の付近が65.3mです。JR琴平駅から本宮まで、標高差はおよそ164m。琴平町の指定緊急避難場所は、琴平町文化会館(本宮から約984m・標高68.7m)、いこいの郷公園(約1,129m・124.3m)、琴平町立琴平小学校(約1,289m・70.7m)など。内陸の町なので津波の指定はなく、すべて地震に対応しています。いちばん近い場所でも直線で約1km、しかも本宮より165m低い所にあります。

石段の上にいる人が、揺れの直後に指定避難場所へ「下りる」のは現実的ではありません。ここで効く一次資料が1つあります。琴平町地域防災計画の協定一覧に、令和6年12月16日に金刀比羅宮と結んだ「災害発生時における観光客等災害対策活動に関する協定書(緊急避難広場)」が載っています。境内が、観光客の緊急避難広場として使われる取り決めです。どの区画をいつ開けるかまでは公表されていないので、当日は係の方の案内に従ってください。琴平町のハザードマップには、津波ではなく別の注意が書かれています。「琴平町では、大地震の後に津波の影響はほぼありませんが、ため池が決壊する可能性があります」。そして「車での避難は控える 避難は徒歩が原則!」。

帰れない時|本州へ帰る道が、点検で止まる

香川県の被害想定報告書には、旅行者に直接ひびく一文があります。「瀬戸大橋線等の点検により、県外への移動困難、貨物輸送の物流停止等が発生する。」橋が落ちるという記述ではありません。点検が終わるまで動かない、という記述です。復旧の順番も段階で並んでいて、3日から1週間後に「高松空港等を用いた航空機による交通が回復し、県外への移動需要の一部を代替する」と書かれています。

滞留する人の規模も出ています。平日の12時に地震が起きて公共交通機関が広域的に止まった場合、外出先に一時的に滞留する人は県内で約6.4万人。報告書には「他地域からのビジネス客や観光客が被災した場合、受入れリソースの少ない地域に帰宅困難者があふれる」「公立学校は主として地元住民のための避難所となるため、帰宅困難者の受け入れが困難となる」とあります。県の応急対策の筆頭は「一斉帰宅の抑制を徹底する」。理由も書かれています。「むやみに移動を開始すると、路上では大混雑が発生し集団転倒などの危険性が高まる。」

観光客が使える情報源|8言語のアプリと、英語のハザードマップ

香川県の防災アプリ「香川県防災ナビ」は、危険なエリアにいる人へのプッシュ通知、ハザードマップと避難所の地図表示、最寄りの避難所へのルート検索、家族の安否確認ができます。英語・韓国語・中国語・ベトナム語・スペイン語・インドネシア語・タガログ語・ポルトガル語の8言語に対応し、令和8年4月にシステムが新しくなりました。琴平町のハザードマップには英語版があります。高松市の防災マップには、津波と高潮の浸水想定区域、地震動と液状化の分布に加えて、平成16年の台風による浸水の実績も載っています。2004年の台風第16号で高松港は246cmの潮位を観測し、高松地方気象台が「観測開始以来最も高い潮位」と記録しました。これは高潮であって津波ではありませんが、同じ場所が水につかった記録です。

持ち物と、今日できること

高松で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。津波避難ビルの上階や駐車場の2階以上で長く待つ場面では、羽織る物と靴が先に効きます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。

今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。宿の住所か郵便番号をハザードマップかんたん検索に入れると、近くの指定緊急避難場所を国の地図で開けます。高松では保存するときに、その場所が「地震」だけの対応か、「津波」にも対応しているかを一緒に見てください。駅や港の近くに泊まるなら、その建物が津波避難ビルの一覧に載っているかも、あわせて確かめておきます。

この記事の出典

  • 香川県『香川県地震・津波被害想定調査報告書』(令和7年9月)、同 第一次公表(令和7年7月1日)・第二次公表(令和7年9月2日)、同『最高津波水位予測図』『海面変動影響開始時間予測図』
  • 高松市『高松市の津波避難ビル』『高松市指定津波避難ビル一覧』(令和8年7月1日現在)、同『高松市防災マップ』『過去の台風による被害情報』
  • 琴平町『琴平町総合ハザードマップ』(情報学習面・英語版)、同『琴平町地域防災計画〔資料編〕』(令和8年3月)
  • 香川県『香川県防災ナビ』、高松地方気象台『過去事例を引用した警戒の呼びかけ 平成16年(2004年)台風第16号』
  • 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(高松市分 2026年1月23日更新・琴平町分 2026年2月24日更新)、標高API(2026年9月9日取得)

※避難場所の指定・津波避難ビル・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月16日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と高松市・琴平町・香川県の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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