自治体の災害見舞金はいくら?|1軒の火事でも出る市と、出ない区

市役所の窓口で、被害の写真が写ったスマホと申請の紙を差し出す安心こちゃんと、話を聞く職員

「災害の支援金は最大300万円」という話は聞いたことがあっても、自分の市や町が出す「災害見舞金」の額を知っている人は少ないです。台所からの火事で家が半焼した、床上まで水が来た、隣の火事の消火で部屋が水浸しになった。こういう「うちの1軒だけ」の被害で動くのは、国の制度ではなく、市区町村の見舞金です。

結論を先に言います。自治体の災害見舞金は、同じ被害でも住む場所で額が違い、火事1軒でも出る市がある一方で、地震では出ない区もあります。額は数万円が中心で、生活を立て直すお金ではありません。ただ、いちばん早く届くお金です。そして、申請しないと出ない自治体がほとんどです。

私は防災士として、内閣府の制度資料と、全国9都市と地元・香川の市町の公式ページ・条例・要綱を2026年9月14日に読み、書いてある金額と条件だけをこの記事に載せました。読み終わる頃には、国の制度と自治体の見舞金の違いが分かり、自分の住む場所で今日確かめることが1つ決まります。

先に結論|国の支援と、自治体の見舞金は別の物です

災害のお金は、大きく2つに分かれます。国の法律で決まっている制度と、市区町村が自分の条例や要綱で決めている見舞金です。混同しやすいので、先に表で分けます。

制度 決めているのは 動く条件 火事1軒で 金額の桁
災害弔慰金・災害障害見舞金 国の法律 自然災害で、1つの市町村で住居5世帯以上が滅失するなどの規模要件 出ない 125万〜500万円
被災者生活再建支援金 国の法律 10世帯以上の住宅全壊が出た市町村などの自然災害 出ない 25万〜300万円
自治体の災害見舞金 市区町村の条例・要綱 自治体が自分で決める。火災・爆発を含む例が多い 出る自治体が多い 5千円〜10万円
国の災害支援制度と自治体の災害見舞金の違い。国は災害の規模が条件で火事1軒では出ない、自治体の見舞金は1軒の被害で動き5千円から10万円

国の制度は「災害の規模」が条件です。大きな地震や水害で、町ぐるみで被害が出た時に動きます。国の制度の中身と申請の順番は災害支援金・助成金の記事にまとめてあるので、この記事では自治体の見舞金だけを扱います。

自治体の見舞金が動くのは「うちの1軒の被害」です。桁は1つか2つ小さい代わりに、条件が軽く、先に届く。順番で言えば、こちらが先です。

同じ「全焼」でも、住む場所で額が違う

2人以上の世帯で家が全焼した場合の見舞金を、公式ページに金額が書いてある自治体だけ並べます。確認日はすべて2026年9月14日です。

自治体 全焼・全壊(2人以上の世帯) 半焼・半壊 床上浸水 死亡
名古屋市 90,000円 70,000円 50,000円 100,000円/人
福岡市 60,000円 40,000円 30,000円 100,000円/人
世田谷区 60,000円 40,000円 40,000円 90,000円
京都市 5千円〜3万円(被害の程度による) 30,000円/人
綾川町(香川県) 20,000円+布団1組(1人につき) 20,000円+布団 10,000円(半壊未満) 20,000円/人
札幌市 市の制度は公式サイトで見つからず。市社会福祉協議会の「赤い羽根災害見舞金」が全焼20,000円・半焼10,000円・死亡は世帯員1人20,000円

名古屋市の9万円と、綾川町の2万円。同じ全焼で4.5倍の差があります。単身世帯は額が下がる自治体が多く、名古屋市は7万円、福岡市と世田谷区は4万円です。世田谷区は生活保護世帯に2万円を上乗せし、区の社会福祉協議会からも全焼・半焼に1万円が出ます。

仙台市と新宿区にも見舞金の制度はありますが、公式ページに金額が書かれていません。額を知るには窓口に聞くことになります。

この差は、良い悪いの話ではありません。市区町村が自分の予算で決めている以上、違って当たり前です。大事なのは「自分の町はいくらか」を知っていることです。

火事1軒でも出る市と、地震では出ない区

自治体の見舞金の多くは、対象に火災を含めています。名古屋市は「風水害、地震、火災、その他これらに類する災害」、福岡市は「火災、爆発、その他市長がこれに類すると認めた事故」まで対象です。京都市も「災害(火災も含む)」と明記しています。国の制度が自然災害に限られるのと違う点は、ここです。

名古屋市には「消火冠水」という区分があります。自分の家は燃えていなくても、隣の火事の消火活動で部屋が水浸しになった世帯に、2人以上で5万円が出ます。同じ「消火活動による水損」の区分を置いているのは、世田谷区と仙台市も同じです。火事の被害は、燃えた家だけでは終わらない。この区分は、それを知っている自治体の設計です。

逆の例もあります。世田谷区の災害見舞金は、対象が「火災や風水害(地震による災害を除く)」です。地震では出ません。地震のような広い被害は国の制度で対応する、という切り分けです。首都直下地震を心配して世田谷区に住んでいる人が、区の見舞金を当てにしていると外れます。

大阪市は、公式サイトで見つかるのが国の制度(災害弔慰金・災害障害見舞金)だけで、対象は自然災害に限られています。火事1軒の見舞金は、市の制度としては見つかりませんでした。

申請しないと出ない市と、町が把握したら出す町

見舞金の受け取り方には2つの型があります。多くは申請型です。福岡市は区役所の地域保健福祉課、名古屋市は区役所の総務課庶務係、世田谷区はまちづくりセンターに、被害を証明する書類を持って申請します。

綾川町は別の型です。要綱の第3条に「町長は、災害による被害の発生を把握したときは、直ちに事実関係を調査の上、速やかに見舞金等を支給する」とあります。町が被害を把握したら、町の側から調べて支給する型です。申請期限の定めもありません。小さな町だからできる形ですが、住んでいる人がこの一文を知っているかどうかで、受け取りやすさは変わります。

申請型の自治体で共通しているのは、「被害が確認できないと出せない」という一点です。世田谷区は「見舞金の支給を希望される以前に住居の改修をされる方は、被害状況やその被害が台風等の現象によるものとわかる写真の提出等をお願いいたします。なお、被害状況等が確認できない場合につきましては、災害見舞金をお贈りできません」と書いています。

申請期限は、公式ページに明記していない自治体がほとんどでした。期限がないから安心、ではありません。片づけて直してしまえば、確認できる物がなくなるからです。順番は「写真を撮る→片づける→申請する」です。被害の全体が分かる引きの1枚と、壊れた場所の寄りの数枚を、スマホでその日のうちに撮ります。

災害見舞金を受け取る順番。写真を撮ってから片づけ、罹災証明書を取って申請する

見舞金の入口は罹災証明書|火事は消防、それ以外は市役所

申請型の見舞金では、被害を証明する書類として罹災証明書(り災証明書)を求められることが多いです。罹災証明書は災害対策基本法第90条の2に基づいて市町村が出す「被害の程度を証明する書面」で、全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊の区分が内閣府の基準で決まっています。

窓口は2系統です。火事の罹災証明は消防署、風水害や地震の罹災証明は市役所です。高松市の場合、風水害・地震は納税課(本庁舎2階)が発行し、郵送でも申請できます。火災は消防局の扱いです。世田谷区も同じ運用で、火災は世田谷・玉川・成城の消防署が発行します。

被害が軽い場合は、写真だけで判定する「自己判定方式」を置いている自治体もあり、高松市がその1つです。市のページには「家屋の被害が明らかに軽微であり、申請者が『準半壊に至らない(一部損壊)』という被害の程度に同意できる場合は、自己判定方式(写真による判定)によることが可能」とあります。立ち会いの調査を待たずに済むので、ここでも写真が効きます。

マイナンバーカードがあれば、罹災証明書(火災を除く)はマイナポータルから電子申請できる自治体が増えました。停電時に動くこと・動かないことはマイナンバーカードと防災の記事に書きました。

高松市と香川県は、公式サイトで見つかりませんでした

地元のことなので、正直に書きます。高松市の例規集(2026年8月1日現在)1,050件を見ましたが、市民向けの災害見舞金は見つかりませんでした。「見舞金」の名が付くのは職員・消防団員向けの公務災害見舞金の3本だけです。高松市にあるのは国の制度どおりの災害弔慰金の条例(弔慰金500万円・250万円、障害見舞金250万円・125万円)で、これは規模の大きい自然災害で動く物です。

ただし「無い」とは言い切れない。高松市の例規集には要綱がほとんど載っておらず、要綱で運用している見舞金があっても表には出ません。香川県の法規集も、全文検索ができない作りで、全部は確かめられていません。高松市・香川県にお住まいの方は、市役所の福祉の窓口か、県の危機管理の窓口で「火事や水害の見舞金はありますか」と一度聞いておくのが確実です。私も確認が取れ次第、この記事に追記します。

福岡市のページには、市の見舞金と並んで福岡県の見舞金も載っています。県内で災害救助法が適用された時に、全壊で一般世帯10万円、半壊5万円、床上浸水3万円が県から出る二階建てです。県によってこの階があったりなかったりするので、市と県の両方を見ておく価値があります。

足し算できないお金|併給できない組み合わせ

見舞金は「もらえる物を全部足す」とはいきません。国の制度と重なる部分は、どちらか一方になる決まりが多いです。

  • 福岡市の死亡見舞金(10万円)は、国の災害弔慰金が出る場合は併給できません。負傷見舞金も国の災害障害見舞金と併給できません
  • 世田谷区の死亡見舞金(9万円)も、国の災害弔慰金が支給される場合は対象外です
  • 名古屋市の弔慰金(10万円)は、大規模な自然災害で市の条例弔慰金が適用される場合は出ません
  • 仙台市の見舞金は「被災者生活再建支援法による給付又は災害救助法による応急修理等の申請をしていない世帯に限る」という条件が付いています

大きな災害では国の制度、1軒だけの被害では自治体の見舞金。おおむねこう住み分けていると考えると、混乱しません。

見舞金に税金はかかりません

受け取った見舞金に所得税はかかりません。所得税基本通達9-23に「葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、課税しない」とあります。自治体が要綱で定めた数万円の見舞金は、この「社会通念上相当」の範囲です。確定申告で申告する必要もありません。

今日できること|自分の町の名前で1回だけ調べる

被災してから調べるのでは遅いです。今日、次の3つを済ませておくと、その日に迷いません。

1つめ。「(自分の市区町村名) 災害見舞金」で検索します。1分です。金額と窓口が出てきたら、そのページをブックマークします。出てこなければ、市役所の代表番号を1つ、スマホの連絡先に「市役所 見舞金」の名前で入れておけば十分です。

2つめ。家の中を、今のうちに写真に撮っておきます。各部屋を1枚ずつ、家具や家電が写るように。被災後に「被災前はこうだった」を示せる物になります。撮った写真はクラウドに上げておくのがおすすめです。スマホが水に浸かっても残ります。

3つめ。本人確認書類・保険証券・通帳のコピーを1つの袋にまとめます。見舞金も罹災証明も、申請に要るのは本人確認と振込先です。持ち出し袋に入れる書類の選び方は防災リュックの記事に書いています。

まとめ|額は小さい、でも先に届く

自治体の災害見舞金は、市区町村が自分で決めている制度です。同じ全焼でも名古屋市9万円、綾川町2万円と差があり、世田谷区のように地震では出ない例もあります。火事1軒でも出る自治体が多く、名古屋市の「消火冠水」のように隣の火事の水浸しまで対象にした区分もあります。申請型が多く、写真を撮ってから片づけるのが順番です。税金はかかりません。

生活を立て直すのは国の支援金と保険の仕事で、見舞金はその前に届く小さなお金です。小さいからこそ、知っていれば確実に受け取れます。

次の行動は1つ。いま、自分の市区町村名と「災害見舞金」で検索してください。出てきたら金額を家族に一言伝える。出てこなければ窓口を1つ控える。それで、この記事の役目は終わりです。国の制度まで含めた全体像は災害支援金・助成金の記事へ、被災直後の現金の備えは災害時のお金・現金管理の記事へどうぞ。

この記事の出典

  • 内閣府『災害弔慰金、災害障害見舞金の概要』、『被災者支援に関する各種制度の概要』(令和8年6月1日現在)、『被災者生活再建支援制度の概要』、『罹災証明書の概要』、『災害の被害認定基準について』(令和3年6月24日 府政防第670号)
  • 名古屋市「名古屋市災害見舞金贈呈要綱による見舞金・弔慰金」(2025年10月17日更新)/ 福岡市「福岡市災害見舞金等の支給」/ 世田谷区「災害見舞金・見舞品」(2026年6月15日更新)/ 京都市「見舞金・弔慰金」(区役所FAQ)/ 仙台市「災害見舞金の支給」/ 新宿区「お見舞金品の支給」/ 札幌市「災害弔慰金等」、札幌市社会福祉協議会「赤い羽根災害見舞金」/ 大阪市危機管理室「災害弔慰金・災害障害見舞金」/ 江戸川区「災害弔慰金等」
  • 綾川町災害見舞金等支給要綱(平成20年告示第1号)、綾川町り災証明取扱規程(平成19年告示第2号)/ 高松市災害弔慰金の支給等に関する条例(昭和49年条例第37号)、高松市「り災証明書」(納税課)、高松市例規集(令和8年8月1日現在)
  • 国税庁 所得税基本通達9-23(葬祭料、香典等)

※見舞金の金額・対象・窓口は、各自治体が条例や要綱で変えることがあります。この記事は2026年9月14日時点の公式ページ・条例・要綱をもとに書いています。申請の前に、お住まいの市区町村の最新のページか窓口で確認してください。高松市・香川県・大阪市・江戸川区は「公式サイトで見つからなかった」のであって、制度が無いと確認できたわけではありません。

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