那覇の県庁前で、国際通りの真ん中で、首里城の石畳で、大きく揺れた。旅行で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、那覇の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、沖縄県と那覇市の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。
結論を先に言います。那覇では、ゆいレールの駅そのものが津波の逃げ込み先に指定されています。那覇市の津波緊急一時避難ビルの一覧に、県庁前・美栄橋・牧志・安里・旭橋・壺川・奥武山公園・小禄・赤嶺・那覇空港の10駅が並んでいます。鉄道が1本しかない街では、駅は「乗る場所」ではなく「上がる場所」です。
私は防災士として、那覇市地域防災計画(令和2年5月修正)、那覇市の津波緊急一時避難ビル協定の締結状況一覧(令和6年3月1日現在)、沖縄県津波避難計画策定指針(令和4年8月)、沖縄県津波被害想定検討委員会の検討結果、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。読み終わる頃には、3つの場所それぞれで最初に向かう先が決まります。
3地点の結論|動くか、上へ行くか
| 場所 | 標高 | 近くの避難場所の対応 | 揺れが収まったら |
|---|---|---|---|
| 県庁前駅・那覇バスターミナル(旭橋) | 3.0m / 2.6m | 開南小学校(県庁前駅から約315m・旭橋駅から約440m)は地震と津波の両方に対応 | 海から離れて東へ。県庁前駅から松尾公園(約753m・標高19.2m)か城岳公園(約768m・31.0m) |
| 国際通り(てんぶす那覇付近) | 約6m | 希望ヶ丘公園(約170m・標高13.6m)が地震と津波の両方に対応 | 通りから一歩入って希望ヶ丘公園へ。もっと上がるなら松尾公園 |
| 首里城公園 | 128.6m | 首里崎山公園(約195m・標高122.1m)ほか、周りが標高100m台 | 津波を考えて動く必要はない高さ。揺れと斜面に気をつける |

※図の棒の高さは、標高の比率どおりではありません。
標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)、避難場所の対応は国土地理院の指定緊急避難場所データ(那覇市分・2025年12月23日更新)です。県庁前駅3.0mから首里城正殿跡128.6mまで、同じ市内で約125mの高低差があります。那覇の逃げ方は「海から山へ」ではなく「西から東へ、モノレールの線に沿って上がる」です。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。
那覇で想定されている地震|南海トラフではない
那覇市が地域防災計画に載せている想定は、沖縄県の地震被害想定調査(平成25年度)にもとづくものです。県内で想定された20の地震のうち、那覇市で震度6強になるものが1つ、6弱が6つ、5強が5つ、4が3つ。最大は沖縄本島南部スラブ内地震(M7.8・深さ30km)で、那覇市の震度は6強です。震源のタイプは、南西諸島海溝(琉球海溝)側の海溝型、沖縄トラフ側、陸域の活断層とスラブ内の3系統で、南海トラフは含まれていません。
津波については、沖縄本島側の琉球海溝の想定モデルが最大マグニチュード8.2に設定されています。那覇市の沿岸で何mの津波が何分で来るかは、県と市の資料が図のかたちで、数値として読み取れませんでした。ですから、この記事では那覇の津波の高さと到達時間を書きません。代わりに、県が書いている注意をそのまま置きます。「津波は第1波が最大になるとは限りません」「第1波だけでなく、その後5、6時間から半日程度は繰り返し大きな津波が襲来する危険があります」「沿岸部で地震を感じたら、津波到達時間にこだわることなく、すみやかに避難することが第一です」。
沖縄本島は、大地震の被害の記録が薄い土地でもあります。那覇市の地域防災計画には「沖縄本島で被害があったとの記録があるのは、資料編に示した9地震である」「甚大な被害は発生していない」と書かれています。一方で先島では、1771年の八重山地震津波(明和の大津波)で石垣島の遡上高が85.4mに達し、八重山群島で9,318人が犠牲になりました。この85.4mは石垣島の数字で、那覇の数字ではありません。県はそのうえで、こう書いています。「沖縄本島沿岸において巨大津波の痕跡や史実は確認されていませんが」「本島地方においても同様に、本島沿岸を大津波が襲う可能性は否定できません」。
那覇の分かりにくさ|逃げ込む先が「駅」と「ビル」
| 呼び名 | 何のための場所か | 那覇での様子 |
|---|---|---|
| 指定緊急避難場所 | 市が災害の種類ごとに指定する、命を守るために逃げ込む場所 | 公園と学校の運動場が中心。同じ公園でも津波が対象外の所がある |
| 津波緊急一時避難ビル | 大津波警報が出た時から解除されるまで、上へ逃げ込む建物 | 103事業所・115棟(令和6年3月1日現在)。ゆいレール10駅、ホテル14件を含む |
| 那覇市津波避難ビル | 市がそのために建てた専用の建物 | 松山2丁目・地上4階建・高さ24.75m。3階以上に最大約2,000人 |

那覇でいちばん間違えやすいのがここです。久茂地公園(標高2.5m)と緑ヶ丘公園(標高4.3m)は、地震には対応していますが、津波は対象外です。県庁前駅からも国際通りからも近い公園なので、「駅前の避難場所」としてまとめて覚えると外します。県の指針の言い方はこうです。「浸水深が5m未満の場合も、標高5m以上の高台、高さ5m以上の建物やビルに避難することを原則とする」。よく聞く「3階以上へ」も、県の指針では「想定される浸水が1階の場合は3階以上、2階の場合は4階以上」という条件つきの書き方です。
県庁前駅・旭橋|標高3mの場所から、東へ上がる
県庁前駅の標高は3.0m、旭橋駅と那覇バスターミナルは2.6m、那覇市役所は3.8mです。県庁前駅から見て、地震と津波の両方に対応した最寄りは、開南小学校の運動場(約315m・標高4.5m)、天妃小学校の運動場(約470m・5.3m)、松山公園(約485m・10.9m)。ただし標高で見ると、小学校2校は5m前後です。もっと高い所へ行くなら、松尾公園(約753m・標高19.2m)と城岳公園(約768m・標高31.0m)。どちらも地震と津波の両方に対応しています。
この一帯には、市が津波のために建てた専用の建物もあります。那覇市津波避難ビル(松山2丁目22-1)は平成28年5月に使えるようになった地上4階建てで、3階以上の避難スペースに最大で約2,000人が入ります。建っている場所の標高は2.6mですから、これは「高台へ逃げる」ではなく「上へ上がる」ための建物です。レンタカーが主な移動手段の土地で、県の指針は避難の方法についてこう書いています。「避難は原則として徒歩とする。」
国際通り|通りの中でも、高さが違う

国際通りは、一本の通りの中で標高が変わります。西端の県庁北口交差点付近が3.2m、中ほどのてんぶす那覇の前が約6m、東の牧志駅が4.6m。同じ通りの中に、標高5mに届かない所があります。てんぶす那覇の前から見て、地震と津波の両方に対応した最寄りは、希望ヶ丘公園(約170m・標高13.6m)、壺屋小学校の運動場(約300m・9.2m)、松尾公園(約560m・19.2m)。通りから一歩入るだけで、希望ヶ丘公園に着きます。もっと高い所なら、城岳公園(約880m・31.0m)です。ここでも緑ヶ丘公園(約420m・標高4.3m)は津波が対象外なので、選ばないでください。
通り沿いとその近くには、津波緊急一時避難ビルに指定された建物もあります。ホテルコレクティブ、さいおんスクエア北棟、JR九州ホテルブラッサム那覇、パレットくもじ、そしてゆいレールの美栄橋駅・牧志駅・安里駅・県庁前駅。泊まっているホテルが、そのまま逃げ込み先になっている場合があります。県の指針には「海岸沿いの観光施設、宿泊施設、フェリーターミナルにあっては、原則として施設の管理者等が観光客等を指定緊急避難場所へ誘導する責任がある」と書かれています。宿の人の案内には、根拠があります。
首里城公園|高さは足りている。心配は別のところ
首里城正殿跡の標高は128.6m、守礼門が111.8m、ゆいレールの首里駅が114.9mです。周りの指定緊急避難場所も、首里崎山公園(約195m・標高122.1m)、城西小学校の運動場(約340m・102.9m)、城南小学校の運動場(約511m・119.6m)と、すべて標高100mを超えています。首里で津波を考えて動く必要はありません。
ただし、混ぜてはいけないことが2つあります。1つ目は揺れです。那覇市の想定最大震度6強は、首里でも同じです。2つ目は斜面です。首里は坂の多い土地です。石垣や坂の下から離れて、広い場所へ出ます。
帰れない時|那覇には、その制度が見当たらない
那覇の公共交通は、ゆいレールとバスだけです。地下街もありません。ですから「電車が止まって数十万人が駅に滞留する」という、ほかの大都市の型はそのまま当てはまりません。那覇市の資料には、東京都のような帰宅困難者対策の条例も、一時滞在施設の一覧も見当たりませんでした。代わりに受け皿になっているのが、103事業所・115棟の津波緊急一時避難ビルです。那覇市役所本庁舎、パレットくもじ、サンエー那覇メインプレイス、県立那覇商業高等学校、市営住宅、そしてホテル14件が名前入りで並んでいます。
旅行者は、国の言葉では「行き場のない帰宅困難者」と呼ばれます。内閣府のガイドライン(令和8年1月)の用語定義に、その例として「観光客、買い物客」がそのまま書かれています。同じガイドラインでは、コンビニやガソリンスタンドが徒歩帰宅者に水道水やトイレを出す災害時帰宅支援ステーションは、発災3日後を目安に動くと定義されています。すぐに誰かが助けてくれる前提では書かれていません。
観光客が使える情報源|県には、観光客のための計画がある
沖縄県には「沖縄県観光危機管理計画」があり、その下に地震・津波編のマニュアルがあります。中身は県庁内部の手順が中心で、観光客の安否の集約、外国人向けの窓口の設置、観光客の帰宅支援といった項目が並びます。観光客を正面から対象にした計画が、県の側にあります。那覇市側では、デジタル版の「なはMAP」で津波災害警戒区域図やハザードマップを、いまいる場所から確かめられます。県の指針には「観光客等の地理不案内で津波の認識が低い外来者に対しては、海抜・津波浸水予想地域…案内看板等の設置が必要である」とあります。街角の海抜表示は、旅行者のために出ています。
持ち物と、今日できること
那覇で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。日差しの強い時間に屋外や高い場所で待つ場面では、帽子と水の入れ物が先に効きます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。
今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。宿の住所か郵便番号をハザードマップかんたん検索に入れると、近くの指定緊急避難場所を国の地図で開けます。那覇では保存するときに、その場所が「地震」だけの対応か、「津波」にも対応しているかを一緒に見てください。海側に泊まるなら、その建物が津波緊急一時避難ビルかどうかを、フロントで一度聞いておくと確かです。
この記事の出典
- 那覇市『那覇市地域防災計画 第1編【総則】』(令和2年5月修正)、同『津波緊急一時避難ビル協定の締結状況一覧』(令和6年3月1日現在)、同『那覇市津波避難ビル建設工事 計画概要』、同『なはMAP』
- 沖縄県『沖縄県津波避難計画策定指針』(令和4年8月)、沖縄県津波被害想定検討委員会『沖縄県津波被害想定検討結果について』(平成25年1月28日)、沖縄県『平成25年度沖縄県地震被害想定調査 概要版』
- 沖縄県「地震・津波の被害及び対策」(1771年 八重山地震津波)、沖縄県『沖縄県観光危機管理計画』『観光危機管理マニュアル 地震・津波編』
- 内閣府(防災担当)『災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン』(令和8年1月)
- 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(那覇市分 2025年12月23日更新)、標高API(2026年9月9日取得)
※避難場所の指定・協定施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月16日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と那覇市・沖縄県の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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