京都で地震にあったら|京都駅・清水寺・嵐山の動き方と避難場所

京都駅の烏丸口で、清水の舞台で、渡月橋の上で、大きく揺れた。旅行で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、京都の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、京都市と京都府の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。

結論を先に言います。京都で観光客が向かう先は、小学校ではなくお寺と神社です。京都市は寺社等50施設と「緊急避難広場」の協定を結んでいて、多言語のガイドマップには清水寺・天龍寺・二条城が名指しで載っています。市の言い方は「一斉に駅に向かうと大変危険です」。京都駅へ戻ろうとする動きが、いちばん止めたい動きです。

私は防災士として、京都市第4次地震被害想定(令和5年3月)、京都府の花折断層帯地震被害想定調査(令和6年3月)、京都市防災ポータルサイトと帰宅困難者ガイドマップ、京都府の土砂災害警戒区域の指定、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。読み終わる頃には、3つの場所それぞれで最初に向かう先が決まります。

3地点の結論|駅へ戻るか、その場にとどまるか

場所 標高 観光客の行き先 揺れが収まったら
京都駅前(烏丸口) 27.7m 緊急避難広場 駅に向かわない。緊急避難広場にとどまる
清水寺 115.5m 清水寺そのもの その場が避難先。境内で案内を待つ
嵐山(渡月橋) 32.4m 天龍寺 橋の上から離れる。法輪寺は南に約323m・標高56.9m

京都3地点の動き方。京都駅前は駅に向かわない、清水寺はその場が避難先、嵐山は橋の上から離れる

標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)です。京都府の津波浸水想定の対象は日本海側の舞鶴市・宮津市・京丹後市・伊根町・与謝野町の5市町で、京都市は対象に入っていません。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。

京都で想定されている地震|市街地の一部が震度7

京都市が本命にしている想定は花折断層地震です。断層は京都市左京区から滋賀県高島市まで長さ46.5km、規模はMj7.5。第4次地震被害想定(令和5年3月)では、冬18時の条件で全壊・焼失12万1,000棟、半壊11万1,000棟、死者4,100人、負傷者3万人、避難所内避難者16万5,000人です。内訳は全壊が約10.0万棟、焼失が約2.1万棟。震度7は北区・上京区・左京区・中京区・東山区・山科区・下京区の一部に分布し、震度6強は市街地から宇治市や向日市の一部にかけて広がると府の報告書に書かれています。

水の数字が厳しい街です。断水率は発災直後62.9%、1日後38.4%、4日後23.1%、1か月後0.0%。1か月断水するのではなく、4日たっても4軒に1軒は断水している、が正確な読み方です。都市ガス供給停止率は89.7%。液状化による全壊は市全体で900棟・0.1%にとどまるので、京都の主役は揺れと火災です。市内の文化財(建造物)850件のうち680件が震度6強以上のエリアに入ります。

南海トラフ地震の場合、京都市の被害は全壊・焼失5,400棟・死者100人で、花折断層地震の20分の1以下です。京都は南海トラフより直下型のほうが被害が大きい街です。嵐山のある右京区だけは事情が違い、震度6強以上にさらされる人口が花折断層で4.0万人、樫原〜水尾断層で10.7万人と逆転します。

京都の分かりにくさ|観光客の行き先と、市民の行き先が別

呼び名 誰のための場所か 何をする場所か
緊急避難広場(寺社等50施設) 観光客・通勤通学者 災害直後に一時的にとどまる。災害情報と交通の運行情報、水道やトイレの提供
一時滞在施設(ホテル・旅館等120施設) 同上 休憩・仮眠。ロビーや宴会場を提供する予定
指定緊急避難場所(小学校など) 市民 災害の種類ごとに市が指定。国土地理院のデータに載るのはこれ

京都は観光客の道と市民の道が別。緊急避難広場は寺社等50施設、一時滞在施設はホテル・旅館等120施設

ここが京都の分かりにくさの中心です。国土地理院のデータだけを見ると、京都駅の周りにも清水寺の周りにも小学校が並びます。けれども京都市の設計では、観光客が最初に向かうのは小学校ではなく緊急避難広場(寺社等)です。市のサイトの言葉は「観光客をはじめ、通勤・通学者の方などが一時的にとどまっていただくための施設です。神社・仏閣などを指定しています」。

その次の一手も決まっています。「あなたが行くべき一時滞在施設を緊急避難広場でご案内します。ご案内がまだの方は、緊急避難広場に向かってください」。つまり宿に戻れないときの行き先は、自分で探すのではなく、緊急避難広場で教えてもらう仕組みです。誘導を手伝う避難誘導団体も22団体あります。徒歩で帰る人には、コンビニなどの「災害時帰宅支援ステーション」で水道水やトイレ、道路情報の提供があります。

京都駅前|一斉に駅へ向かわない

大きな駅前広場から駅に背を向けて歩き出す安心こちゃんと旅行者

京都駅烏丸口付近の標高は27.7mです。花折断層地震では下京区の一部が震度7、区の総人口8万4,074人のうち8万2,098人(97.7%)が震度6強以上にさらされます。帰宅困難者は下京区で3万6,632人と、京都府の報告書で市内最多です。

最寄りの指定緊急避難場所は、元京都市立山王小学校(南区東九条東山王町・約413m・標高26.8m)、京都市立下京渉成小学校(下京区皆山町・約591m・30.2m)、元京都市立安寧小学校(下京区・約608m・27.6m)。大規模な火事にも対応しているのは、殿田公園・凌風学園グラウンド(約865m・22.7m)と梅小路公園(約1,091m・26.3m)です。

ただし旅行者がまず読むべきは、京都市の呼びかけのほうです。「一斉に駅に向かうと大変危険ですので、大規模災害発生時は緊急避難広場にとどまりましょう」。京都駅は人が集まる場所なので、そこへ向かう流れそのものが危険になります。駅で揺れたら、駅に近づくのではなく、周りの緊急避難広場に入って案内を待つ。これが京都の型です。

清水寺|その場が避難先

清水寺本堂付近の標高は115.5mで、3地点でいちばん高い場所です。東山区は花折断層地震で総人口3万7,218人のうち3万6,904人(99.2%)が震度6強以上。揺れによる建物全壊率40.3%は、京都市11区で最も高い数字です。区がまるごと強い揺れに入ります。

そして清水寺は、京都市の多言語ガイドマップに緊急避難広場として名指しで載っています。清水寺で被災したら、その場が行き先です。近くの指定緊急避難場所も坂の上にあります。京都府立陶工高等技術専門校(東山区今熊野・約533m・標高92.0m)、ザ・ホテル青龍 京都清水(東山区清水・約554m・68.5m)、大谷本廟(東山区五条橋東・約723m・60.4m)。大規模な火事に対応するのは円山公園(将軍塚周域・約1,043m・62.8m)です。

1つ足しておきます。東山区は京都府の土砂災害警戒区域が8地区65箇所あり、そのうち清水地区に13箇所が指定されています。清水寺の周りは石段と坂です。揺れが収まったあと、あわてて坂を下りるより、境内で案内を待つほうが条件がよい場所です。

嵐山|橋の上から離れる。逃げ先で災害の種類が違う

渡月橋北詰付近の標高は32.4mです。右京区は焼失棟数が市内最多の4,300棟、焼失率4.7%も市内で最も高い。嵐山で怖いのは、揺れそのものより、そのあとの火です。土砂災害警戒区域も右京区は14地区1,015箇所と市内最多で、渡月橋のすぐ北の嵯峨地区に66箇所が指定されています。

最寄りの指定緊急避難場所は、法輪寺(西京区嵐山虚空蔵山町・約323m・標高56.9m)、京都市立嵐山小学校(右京区嵯峨柳田町・約823m・34.2m)、京都市立嵯峨小学校(右京区嵯峨釈迦堂大門町・約892m・47.6m)。法輪寺は渡月橋より24m高い場所にあります。渡月橋のすぐ南で、いちばん近い行き先です。

嵐山は「災害の種類で行き先が変わる」ことがはっきり出ている場所でもあります。嵐山小学校は対応災害種別が「地震」のみで、洪水には対応していません。逆に桂川右岸(嵐山公園〜松尾橋〜上野橋・約1,042m・標高31.8m)は「地震/大規模な火事」に対応していて、洪水の避難先ではありません。川べりだからです。地図アプリで名前だけを見て決めず、対応する災害の種類まで見てください。天龍寺は緊急避難広場に指定されています。

帰れない時|約37万人。案内は緊急避難広場で受ける

京都市は、大規模地震等の災害発生時に観光客をはじめ通勤・通学者など約37万人が帰宅困難者になると想定しています。受け皿は3層です。緊急避難広場が寺社等50施設、一時滞在施設がホテル・旅館等120施設、避難誘導団体が22団体。一時滞在施設については「ホテルや旅館など、帰宅が困難な方が休憩・宿泊できる施設です。ロビーや宴会場を提供していただく予定です」と説明されています。

数字の読み方に1つ注意があります。京都市サイトの「約37万人」と、京都府の報告書にある「京都市20万8,782人」は別の調査の別の数字で、食い違っていても間違いではありません。府の報告書は行政区別に出ていて、下京区3万6,632人、右京区1万4,999人、東山区8,796人。この記事の区別の数字はすべて府の報告書のものです。

観光客が使える情報源|6言語のサイトを、行く前にブックマーク

主力は「京都市帰宅支援サイト」です。日本語・英語・中国語(簡体・繁体)・韓国語・やさしい日本語の6言語で、緊急避難広場と一時滞在施設への案内、交通機関の運行状況が出ます。市自身が「ぜひお使いのスマートフォン等にブックマーク登録してください」と呼びかけています。平常時は運行情報や天気、観光情報も出るので、旅行中もそのまま使えます。

紙で持ちたい人には「京都市帰宅困難者ガイドマップ」があります。5言語併記で、行動をSTEP1〜3に分け、緊急避難広場の位置が地図に載っています。このほか、京都市が運営する「京なびオンライン」の災害ページに一時滞在施設のマップとフリーWi-Fiの情報、京都市Web版ハザードマップに土砂災害警戒区域が表示されます。

持ち物と、今日できること

京都で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。断水率62.9%という数字が示すとおり、京都で先に困るのは逃げ場ではなく水とトイレです。坂と石段の街なので、靴も効きます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。

今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。京都ではもう1つ、京都市帰宅支援サイトをブックマークしておくと、当日に探す手間がなくなります。

この記事の出典

  • 京都市『第4次地震被害想定』(最終報告 令和5年3月・ページ更新2024年7月17日)、報告書 表2-3・表3-3
  • 京都府『花折断層帯地震被害想定調査 報告書』(令和6年3月)、京都府『京都府における地震・津波による被害想定』(津波浸水想定は平成28年3月公表)
  • 京都市防災ポータルサイト『帰宅困難者対策について』(2026年8月28日更新)、京都市帰宅支援サイト『各避難先について』『一時滞在施設のご案内』、京都市『帰宅困難者ガイドマップ』
  • 京都府『土砂災害警戒区域等指定箇所情報』(2026年9月3日更新・東山区/右京区)、京都市Web版ハザードマップ、京なびオンライン 災害ページ
  • 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(京都市分 2026年8月28日更新)、標高API(2026年9月9日取得)

※避難場所の指定・協定施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月11日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と京都市の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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