梅田の地下街で、道頓堀の戎橋で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの行列で、大きく揺れた。旅行や出張で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、大阪の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、大阪府と大阪市の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。
結論を先に言います。大阪で人が亡くなる原因は、揺れではなく水です。大阪府の南海トラフ巨大地震の想定では、死者13万3,891人のうち13万2,967人が津波によるものです。そして大阪市の想定死者11万9,565人は、全員が速やかに避難を開始すれば8,097人になると市が公表しています。動き方で桁が変わる街です。
私は防災士として、大阪府の被害想定、大阪市「想定被害の概要」(2026年3月23日更新)、大阪市の津波避難ビル一覧(令和8年3月31日時点)、地下空間浸水対策計画(令和6年3月)、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。読み終わる頃には、3つの場所それぞれで最初に向かう先が決まります。
3地点の結論|動くか、上へ行くか
| 場所 | 標高 | 近くの避難場所の対応 | 揺れが収まったら |
|---|---|---|---|
| 大阪駅前(梅田) | 0m前後 | 地震のみ。津波は非対応 | 地下にいたら地上へ。接続ビルの2階以上か、新御堂筋より東へ |
| 道頓堀(戎橋周辺) | 3〜4m | 地震と津波の両方に対応した場所が近い | 川から離れ、御津公園や南小学校の方向へ |
| USJ周辺(ユニバーサルシティ駅) | 0m前後。マイナスの地点もある | 地震のみ。津波避難ビルは桜島に2か所 | 中にいるなら係員の案内に従う。外なら津波避難ビルへ |

標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)です。大阪の湾岸は数十m離れると1〜2m変わるので、小数ではなく幅で見てください。「地震のみ」は、その避難場所が津波に対応していないという意味です。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。
大阪で想定されている地震|2つあって、数字が逆転する
大阪は2本立てで想定されています。上町断層帯地震(直下型)は大阪市の震度5強〜7で死者約8,500人、南海トラフ巨大地震(海溝型)は震度5強〜6弱で死者約12万人。震度が大きいのは上町断層帯、死者が桁違いに多いのは南海トラフ。上町断層帯の平成18年度想定では、区別の死者数は中央区(道頓堀)が2,252人で市内最多、北区(梅田)754人、此花区(USJ)89人です。
津波は、大阪府の想定で代表地点ごとに数字が出ています。安治川水門(此花区)で最大水位O.P.5.0m・到達121分、淀川河口(西淀川区)で5.2m・118分。この「5.0m」は大阪湾最低潮位(O.P.)を基準にした数字で、海抜ではありません。到達時間も、海面が1m上がるまでの時間であって、最大波の時刻ではありません。計画の本文にも、想定より早い時間で対応が必要になる可能性がある、と書かれています。
大阪の分かりにくさ|地震の避難場所は、津波の避難場所ではない
| 呼び名 | 何のための場所か | 大阪での様子 |
|---|---|---|
| 指定緊急避難場所(地震) | 市が災害の種類ごとに指定。国土地理院のデータに載る | 梅田・桜島の分は標高0〜1.7mの公園や広場。津波は非対応 |
| 津波避難ビル・水害時避難ビル | 津波や水害から一時的・緊急に上へ逃げる建物 | 北区77箇所、此花区96箇所、浪速区105箇所。中央区は7箇所 |

大阪でいちばん間違えやすいのがここです。梅田とUSJ周辺で「地震」に対応している避難場所は、標高0〜1.7mの公園や広場で、津波には対応していません。地震のあとに津波が来る場面で、そこに居続ける場所ではないという意味です。津波避難ビルの指定要件は、昭和56年6月1日以降の耐震基準を満たし、地上3階建て相当以上であること。使用は無料です。
もう1つ、大阪の川には水門があります。三大水門(安治川・尻無川・木津川)は令和5年4月から自動閉鎖で、津波警報・大津波警報が出るとJアラートの信号で閉まります。閉鎖信号を受けてから8分間、電光表示板と放送で注意喚起があり、60秒前から10秒刻みのカウントダウンが流れます。三軒家水門と出来島水門は津波注意報でも閉まります。川べりで「まもなくこの水門は緊急閉鎖します」という放送が流れたら、川から離れる合図です。
大阪駅前(梅田)|地下にいたら、まず地上へ

大阪駅中央付近の標高は0.4m、桜橋口付近が0.1m、うめきた側は-0.5mです。大阪市の地下空間浸水対策計画には、南海トラフ巨大地震で「大阪駅周辺地区では大阪駅北側を中心に、地上部で最大1.9mの浸水が発生」し、北区など浸水の危険性がある17区に避難指示が発令されると書かれています。
地震に対応した最寄りの指定緊急避難場所は、梅田ガーデン2階外部廊下(北区曽根崎二丁目・約519m・標高0.7m)と中津南公園(北区中津五丁目・約579m・0.1m)。津波にも対応しているのは、グラングリーン大阪 南館(北区大深町・約392m・0m)と同 北館(約476m・0.2m)です。広域避難場所は「うめきた東側一帯(施設内を除く)」で、避難可能人数4.4万人。
地下街にいる場合の行き先は、計画で改札ごとに決めてあります。ホワイティうめだ・梅田駅・大阪駅前地下道・阪神大阪梅田駅・東梅田駅の利用者は、接続ビルの2階以上か、新御堂筋より300m以上東側の地域。大阪駅前ダイヤモンド地下街や西梅田側の利用者は、接続ビルの2階以上です。経路は、アーケードや商店街などの狭い道ではなく、道幅や周りの建物を考えて選ぶ必要がある、とあります。梅田でやることは1つ、地上に出ることです。
道頓堀|3地点で唯一、津波にも対応した場所が近い
戎橋付近の標高は3.4〜4m。なんば駅前3.3m、心斎橋2.4mで、上町台地の西のふもとにあたります。津波の想定は、難波駅周辺地区の計画で「湊町1丁目付近において、地上部で最大0.9mの浸水」。梅田の1.9mより浅い数字です。
最寄りの指定緊急避難場所は、御津公園(中央区西心斎橋二丁目・約484m・標高2.6m)、南小学校 運動場(中央区東心斎橋一丁目・約543m・3.7m)、難波千日前公園(中央区難波千日前・約616m・3.7m)、道仁公園(中央区島之内二丁目・約764m・3.9m)。この4か所は地震と津波の両方に対応していて、大阪の中心部では珍しい条件です。ただし中央区の水害時避難ビルは7箇所で、本町や堺筋本町など道頓堀から離れた場所にあります。
少し南の大正橋東詰に「大地震両川口津浪記」の碑が立っています。1854年の安政南海地震のあとに建てられ、大阪府が現代語訳を公表しています。碑文には、津波が押し寄せて東堀まで約1.2mの深さの泥水が逆流し、安治川や木津川の橋はすべて崩れ落ちた、とあります。そして「強い地震のときは、決して川船に避難してはいけない」と続きます。172年前に大阪の川で起きたことが、石に彫って残されています。
USJ周辺|中にいるなら、係員の案内に従う
USJ正門付近の標高は2.4m、ユニバーサルシティ駅は0.4m、その少し北は-0.9m、桜島駅は1.5m。此花区の公式ページは「区内の多くの地域が海抜0m以下」と書いています。同じページの想定は、津波到達まで113分、区内最大浸水深5メートル強、区内の死者9,277人(避難迅速化時597人)。震度は南海トラフで区内最大6弱、上町断層帯で6強です。
地震に対応した最寄りの指定緊急避難場所は、島屋西公園(此花区島屋五丁目・約501m・標高0.1m)、桜島公園(此花区桜島三丁目・約613m・1.7m)。どちらも津波には対応していません。津波にも対応しているのは、桜島北公園(此花区桜島二丁目・約521m・0.7m)と市営桜島住宅1号館(此花区桜島三丁目・約685m・1.7m)です。
此花区の津波避難ビルは96箇所ありますが、その多くは西九条・四貫島・伝法など駅から離れたエリアに集中しています。桜島エリアで一覧に載っているのは市営桜島住宅1号館(320人)と桜島北公園(1,662人)の2つで、USJ本体・園内のホテル・ユニバーサルシティウォークは載っていません。園の中で揺れたら、係員の案内に従う場面です。外にいるなら、上の2か所が行き先になります。
帰れない時|旅行者を受け入れる協定が30施設
南海トラフ巨大地震で、大阪市の帰宅困難者は約86.57万人と想定されています。大阪駅周辺地区の対応マニュアルは、発災直後にやることを「安全の確保」「正確な情報入手・伝達」「むやみに移動しない」の3つに整理し、具体の行動として「駅・ターミナルに行かない」「一斉に帰宅しない」を挙げています。理由は、道路が混雑して人命救助に支障が出るため、落下物による事故の恐れがあるため、です。
屋外で被災した人の受け入れ先として、大阪市は宿泊施設との協定を30施設、帰宅困難者受入施設を約45施設確保しています。市のページには「主に外国人を含む旅行者の受入れを予定しています」と、あわせて「可能な範囲での受入れであり建物等の被災状況によっては受入れができない場合もあります」とあります。開くとは限らない前提で持ち物を決めます。
観光客が使える情報源|終わったアプリと、今動いているアプリ
今の主力は大阪市の「大阪防災アプリ」です。日本語・英語・中国語・韓国語・やさしい日本語に対応し、防災マップには災害時避難所だけでなく津波避難ビルと浸水想定が載ります。この記事の「地震の避難場所と津波の避難ビルは別」を、地図の上で確かめられます。1つ注意を。大阪府が出していた外国人旅行者向けの「Osaka Safe Travels」は2025年3月29日で終了しています。まとめサイトには今も紹介が残っているので、探さないでください。
持ち物と、今日できること
大阪で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。梅田の地下から地上に出て、そのあと2時間近く外にいる場面では、雨風をしのぐ物と靴が先に要ります。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。
今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。大阪では保存するときに、その場所が「地震」だけの対応か、「津波」にも対応しているかを一緒に見てください。湾岸に泊まるなら、津波に対応した場所をもう1つ足します。
この記事の出典
- 大阪府危機管理室『現在公表している被害想定について』(南海トラフ巨大地震は平成26年1月公表、内陸断層は平成19年3月公表)
- 大阪市『想定被害の概要』(2026年3月23日更新)、大阪市此花区『此花区 防災基本情報』(2021年5月24日更新)、大阪市『津波避難ビル・水害時避難ビル一覧表』(令和8年3月31日時点)
- 大阪市地下空間浸水対策協議会『大阪駅周辺地区 地下空間浸水対策計画 Ver.2』『難波駅周辺地区 同 Ver.1』(令和6年3月)、大阪市『大阪駅周辺地区 帰宅困難者対応マニュアル Ver1』(平成27年7月)、同『災害時における旅行者を含む帰宅困難者の一時滞在受入れについて』(2026年7月22日更新)
- 大阪府西大阪治水事務所『水門自動閉鎖に係る注意喚起』、大阪府『大地震両川口津波記 碑文』(現代語訳)
- 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(大阪市分 2026年9月4日更新)、標高API(2026年9月9日取得)
※避難場所の指定・受け入れ施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月11日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と大阪市・大阪府の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物や駅ホームの高さではありません。

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