博多駅の博多口で、天神の交差点で、太宰府の参道で、大きく揺れた。旅行や出張で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、福岡の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、福岡県・福岡市・太宰府市の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。
結論を先に言います。福岡は「いつか来る」街ではなく、「もう起きた」街です。2005年3月20日10時53分、福岡県西方沖でM7.0。中央区(天神)で震度6弱、博多区で震度5弱を観測しました。1か月後の4月20日にも中央区・博多区で震度5強。このとき動いたのは警固断層帯の北西部で、南東部はまだ動いていません。その南東部は福岡市から筑紫野市にかけて延びています。
私は防災士として、福岡県「地震に関する防災アセスメント調査」(令和7年)、福岡市総合ハザードマップ、福岡市「帰宅困難者対策について」と一時滞在施設の一覧(令和8年3月末時点)、太宰府市「災害時の避難場所等」、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。読み終わる頃には、3つの場所それぞれで最初に向かう先が決まります。
3地点の結論|どこへ動くか
| 場所 | 標高 | 近くの避難場所の対応 | 揺れが収まったら |
|---|---|---|---|
| 博多駅前 | 3.5m | 地震と津波の両方に対応 | 明治公園・堅粕公民館・音羽公園へ。地下街は受け入れ側 |
| 天神 | 3.8m | 地震と津波の両方に対応 | 福岡市庁舎の西側広場と1階ロビー、警固公園へ |
| 太宰府天満宮 | 52.2m | 地震に対応。津波の想定はない | 太宰府館へ。地震に対応していない避難場所が近くにある |

標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)です。太宰府市は内陸なので、この記事では「海抜」ではなく「標高」と書きます。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。
福岡で想定されている地震|2025年に最大震度が6強から7へ上がった
福岡県は令和7年に「地震に関する防災アセスメント調査」の結果を公表しました。前回の平成23年度調査から約10年ぶりの見直しです。警固断層帯が北西部と南東部で連動した場合の想定はM7.7、県内の最大震度7。冬18時・強風のケースで全壊全焼3万6,000棟、死者1,800人、避難者31万9,000人。30年以内の発生確率は南東部で0.3〜6%、北西部は「不明」です。
福岡市だけを取り出すと、警固断層帯で最大震度7、全壊全焼1万4,000棟、死者900人、避難者20万1,000人。前回調査では最大震度6強・避難者2万5,000人でした。市の資料は増えた理由を「揺れの大きいエリアが拡大したため、被害全体が増加」と説明しています。1つ注意を。福岡市の総合ハザードマップはM7.2(南東部が単独で動く想定)で作られていて、県の令和7年調査はM7.7(連動)です。どちらの数字かを確かめずに混ぜないでください。
津波は、福岡市に津波をもたらす波源が2つあると市のハザードマップに明記されています。西山断層(M7.6)で博多区の最高津波水位2.4m・到達42分、中央区2.2m・41分、早良区1.9m・38分。対馬海峡東の断層(M7.4)で東区3.4m・152分。最大でも3.4m台で、南海トラフのような10m級ではありません。ただし到達時間の最短は早良区の38分で、1時間たたないうちに来る数字です。南海トラフ地震の場合、福岡市の最大震度は5弱です。
福岡の分かりにくさ|地下街は「出る場所」ではなく「受け入れる場所」
地下街と聞くと、地震のときは追い出される場所だと思いがちです。福岡市の公式の立場は逆で、天神地下街も博多駅地下街も地下鉄の駅も、帰宅困難者を受け入れる側として協定に入っています。一時滞在施設一覧(令和8年3月末時点)の協定の中身をそのまま並べます。
| 協定の相手 | 協定の中身(一覧の原文) |
|---|---|
| 福岡地下街開発(株) | 天神地下街地下1階広場等への帰宅困難者の一時受け入れ |
| (株)博多ステーションビル | 博多駅地下街(博多ステーションビル)への帰宅困難者の一時受け入れ |
| 福岡市交通局 | 福岡市地下鉄博多駅、天神駅及び天神南駅への帰宅困難者の一時受け入れ |

ホテルも同じ一覧に名前入りで載っています。コンフォートホテル1階ロビー、JR九州ホテル ブラッサム福岡1階ロビー、西鉄ホテルクルーム博多2階ホテルロビー・会議室。旅行者にとっていちばん現実的な行き場です。ただし市は「原則として福岡市からの依頼に基づき開設される」「施設によっては建物の被害等により開設できない場合があります」と書いています。開くとは限らない前提で持ち物を決めます。
博多駅前|避難場所が津波も兼ねている

博多駅前の標高は3.5mです。低い土地ですが、この街には条件のよい点があります。近くの指定緊急避難場所が、地震と津波の両方に対応しているのです。明治公園(博多区博多駅前三丁目・約339m・標高4.7m)、福岡市堅粕公民館(博多区博多駅東一丁目・約340m・3.6m)、音羽公園(博多区博多駅南一丁目・約343m・4.0m)。3か所とも「崖崩れ等/地震/津波」に対応しています。
つまり博多駅前では、地震のあとに津波警報が出ても、行き先を選び直さずに済みます。福岡市東住吉公民館(博多区博多駅前四丁目・約447m・3.7m)は洪水・高潮にも対応していますが、備考に「浸水・高潮は2階以上」とあります。建物に入る場合は、指定された階まで上がってください。
屋内にいるなら、前の章のとおり博多駅地下街・JRJP博多ビル地下2階広場・KITTE博多地下1階広場が受け入れ先の候補です。揺れが収まったら、その場の係員の案内を聞くのが先です。
天神|最初の避難場所は、市役所そのもの
天神の標高は3.8mです。ここで面白いのは避難場所の顔ぶれです。最も近い2か所は福岡市庁舎の西側広場(中央区天神一丁目・約219m・標高3.0m)と1階ロビー(約245m・3.0m)、3番目が警固公園(中央区天神二丁目・約325m・2.5m)。待ち合わせに使うあの場所が、そのまま指定緊急避難場所です。いずれも崖崩れ等・地震・津波に対応しています。少し先に天神中央公園(約356m・3.7m)。
1つだけ覚えておいてほしいのは、警固公園の標高が2.5mで、この一帯では低いほうだという点です。津波警報が出たら、同じ避難場所でも標高の高いほうへ移る判断が要ります。天神ビッグバンで建った新しいビルも、天神ビジネスセンター1階アトリウム、ONE FUKUOKA BLDG.1階グランドロビーなどが一時滞在施設の協定に入っています。警固神社の社務所ビル4階も協定先です。
そして天神は、2005年に実際に震度6弱を観測した場所です。福岡市の記録では、中央区でブロック塀が倒れ、建物の壁の一部がはがれ落ちる被害が多発しました。早良区百道浜では液状化による噴砂も起きています。1か月後の4月20日には、中央区・博多区でもう一度、震度5強が来ました。1回で終わらなかったことが記録に残っています。
太宰府天満宮|内陸。ただし地震に使えない避難場所がある
太宰府天満宮の標高は52.2mです。太宰府市は内陸で、津波の想定はありません。国土地理院のデータにも、太宰府市で「津波」に対応した指定緊急避難場所は存在しません。最寄りは太宰府館(太宰府市宰府三丁目・約261m・標高47.9m)、太宰府小学校(太宰府市連歌屋一丁目・約461m・53.8m)、同 校庭(約539m・53.3m・地震のみ)です。
ここで1行、覚えて帰ってほしいことがあります。参道のすぐ近くにある連歌屋公民館(宰府三丁目)は、風水害と土砂災害には対応していますが、地震には対応していません。名前と距離だけで選ぶと、地震の日に開かない場所へ向かうことになります。太宰府市は、指定緊急避難場所を「緊急に災害の危険から逃れるための場所」、指定避難所を「一定期間避難生活をする場所」と分けて説明しています。
もう1つ、数字の注意です。太宰府市の揺れやすさマップは、平成24年3月の福岡県の旧報告書(M7.2想定)を使って作られていて、令和7年の新しい県調査(最大震度7)は反映されていません。見るときは、前提が旧想定であることを頭に置いてください。
帰れない時|最大約19万人。受け皿は地下街とホテルのロビー
福岡市は「警固断層帯(南東部)直下型地震が発生した場合、最大約19万人の帰宅困難者が発生する」と予測しています。そのうえで市が求めているのは「むやみに移動を開始しない」という一斉帰宅抑制の基本原則です。一斉に移動を始めると、混雑による集団転倒や落下物による怪我の恐れがあり、緊急車両が通行できなくなって救助・救急・消火活動の妨げになるため、と書かれています。
徒歩で帰る段になったら「災害時帰宅支援ステーション」が使えます。福岡県や市と協定を結んだコンビニ、ガソリンスタンド、ファミリーレストラン等で、ステッカーが出ている店です。水道水の提供、トイレの使用、通行可能な道路の情報などが受けられます。こちらも「店舗の被災状況等により、サポートが受けられない場合があります」と但し書きがあります。
観光客が使える情報源|アカウント登録なしで使えるアプリ
福岡市の防災アプリは「ツナガル+(プラス)」です。平常時は近くの避難所の表示、設備の表示、避難所へのルート案内、危険度表示。災害時は市からの支援情報の受け取りと、避難所の電子掲示板としての情報共有ができます。「基本的な機能はアカウント登録不要でご利用いただけます」と市が明記しています。旅行者が現地で入れてもすぐ使えます。
地図で全体を見たいときは「福岡市総合ハザードマップ」です。地震・津波・洪水・土砂災害をまとめて見られて、区役所や情報プラザで紙も配られています。外国語で必要な人には、福岡市の「For Foreigner」防災ページ(やさしい日本語・中国語簡体字・韓国語・ベトナム語・ネパール語)があります。
持ち物と、今日できること
福岡で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。地下街やホテルのロビーで待つ前提なら、床に座る時間が長くなるので、敷く物と羽織る物が効きます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。
今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。福岡では保存するときに、その場所の対応災害種別に「地震」が入っているかを見てください。太宰府の連歌屋公民館のように、近くても地震に対応していない場所があります。
この記事の出典
- 福岡県『地震に関する防災アセスメント調査』概要版(報道発表 令和7年10月31日)、福岡市議会 令和7年12月 総務財政委員会報告補足資料(市民局)
- 福岡市総合ハザードマップ「地震」「津波」、福岡県『福岡県津波浸水想定の設定について』(平成28年2月18日公表)
- 福岡市『帰宅困難者対策について』(2026年7月23日更新)、福岡市『福岡市内の一時滞在施設一覧(災害時応援協定)』(令和8年3月末時点)、福岡市防災アプリ「ツナガル+」(2026年8月27日更新)
- 福岡市『西方沖地震20年特設サイト 地震の概要』、気象庁 報道発表『2005年4月20日06時11分頃の福岡県西方沖の地震について』
- 太宰府市『災害時の避難場所等』(2025年4月1日更新)、太宰府市ハザードマップ(2025年6月27日更新)
- 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(福岡市分 2026年8月18日更新・太宰府市分 2025年1月23日更新)、標高API(2026年9月9日取得)
※避難場所の指定・協定施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月11日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と自治体の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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