「うちは防災、まあまあできているほう」。その感覚が全国のどのあたりなのか、数字で確かめる記事です。内閣府が2025年8月に全国1,707人に聞いた防災の世論調査から、実施率がはっきり出ている10項目を選び、○×で答えると全国平均と比べた「防災偏差値」が出るようにしました。
結論を先に言います。全国の平均的な人が実施しているのは、10項目のうち約2.8項目。5項目できていれば偏差値66、上位1割です。逆に言うと、上位に入るハードルは高くありません。しかも、できていない理由の1位は「知らない」ではなく「先延ばし」です。
私は防災士として、内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」の設問原文と集計表、消防庁の住宅用火災警報器の設置率、厚生労働省の国民健康・栄養調査、国土交通省のハザードマップ検討会資料をもとにこの記事を書きました。偏差値の計算方法も本文に書いています。読み終わる頃には、自分の位置と、次に上げる1項目が決まります。
まず測る|10問に答えると偏差値が出ます
「している」「していない」を押して、下のボタンを押してください。各項目の下に、全国で実施している人の割合(内閣府 2025年調査)を書いてあります。入力は端末の中だけで計算し、どこにも送りません。
偏差値の出し方: 各項目の「全国で実施している人の割合」(出典は本文)から、全国の平均的な人が10項目のうちいくつ実施しているか(平均)と、そのばらつき(標準偏差)を計算し、あなたの実施数を「50+10×(あなたの数−平均)÷標準偏差」に当てはめています。項目どうしが独立という前提の近似値です。入力は端末の中だけで計算し、どこにも送信しません。
計算機が動かない時は、下の早見表で同じ結果が分かります。実施している項目の数を数えて、行を見るだけです。
| 実施している数 | 防災偏差値 | 位置の目安 |
|---|---|---|
| 0項目 | 29 | 全国の13.5%が「特に対策は取っていない」 |
| 1〜2項目 | 37〜44 | 平均より下 |
| 3項目 | 51 | ほぼ全国平均(平均は2.8項目) |
| 4項目 | 59 | 上位2割 |
| 5項目 | 66 | 上位1割 |
| 6〜7項目 | 73〜81 | 上位1〜2% |
| 8〜10項目 | 88〜103 | ほぼ最上位。100を超えるのは、全部している人がそれだけ少ないからです |
偏差値の出し方|全国の平均的な人は2.8項目
この偏差値は、学校のテストと同じ考え方で作っています。まず、10項目それぞれの全国実施率を足すと、平均的な人が実施している項目の数が出ます。51.3%+46.1%+37.6%+37.0%+27.2%+23.3%+21.0%+18.6%+15.1%+6.0%で、合計2.83項目。これが平均です。次に、人によるばらつき(標準偏差)を各項目の実施率から計算すると1.36項目になります。あなたの実施数が平均より1.36項目多いごとに、偏差値が10上がります。

1つだけ前提があります。この計算は「10項目それぞれを実施しているかどうかが、互いに独立している」と仮定しています。実際は、備蓄している人は家具も固定している、という重なりがあるので、本当のばらつきはこの計算より少し大きく、偏差値の上下は少し控えめに出るはずです。目安として使ってください。
10項目の全国実施率|上から順に、多い項目から少ない項目へ
| 項目 | 全国の実施率 | 3年前との差 |
|---|---|---|
| 懐中電灯・足元灯の準備 | 51.3% | −2.9 |
| 食料・飲料水・日用品・薬の準備 | 46.1% | +5.3 |
| 家具・家電の固定 | 37.6% | +1.7 |
| 避難場所・避難経路を決めている | 37.0% | +2.5 |
| 携帯トイレ・簡易トイレを3日分以上 | 27.2% | (2025年に新設) |
| 消火器の準備 | 23.3% | −0.8 |
| 貴重品をすぐ持ち出せるように | 21.0% | +1.2 |
| 外出時に予備電池を携帯 | 18.6% | +2.7 |
| 家族の安否確認の方法を決めている | 15.1% | +0.2 |
| 感震ブレーカーの設置 | 6.0% | +0.8 |

3年前(2022年調査)と比べて、内閣府が報告書で「上昇した」と名指ししているのは食料・飲料水の1項目だけです。40.8%から46.1%に増えました。能登半島地震のあとの変化と見られますが、報告書は理由を書いていないので、ここは推測です。他の項目の増減は、誤差の範囲として扱われています。
いちばん多い懐中電灯でも半数。感震ブレーカーは6%です。つまり、感震ブレーカーを付けているだけで、その1項目では上位6%に入ります。偏差値が「少ない項目ほど上げ幅が大きい」のではなく「どの項目も1つ増えれば同じだけ上がる」計算にしたのは、防災の効き目は実施率の高低と関係がないからです。感震ブレーカーが6%なのは効かないからではなく、知られていないからです。
「している」の中身|家具を全部固定できている人は約3%

家具を固定していると答えた37.6%の人に、どの程度できているかを聞いた設問があります。「ほぼ全ての家具・家電の固定ができている」は8.4%。「重さや高さのある家具の固定はできている」が30.6%。「一部の固定はできている」が58.8%でした。全体で見ると、ほぼ全部を固定できている人は37.6%×8.4%で、約3.2%です。
この記事の診断では「一部でも固定していれば○」にしています。内閣府の設問がそうなっているからです。だから偏差値が高く出ても、中身は「寝室の本棚だけ」かもしれません。それでいいと思います。寝室の背の高い家具1つを止めることが、けがを減らす順番の1番目だからです。寝室の防災の記事に、止める順番を書いています。
できていない理由|1位は「先延ばし」38%、「方法が分からない」は9%
家具を固定していない1,045人に理由を聞くと、1位は「やろうと思っているが先延ばしにしてしまっているから」38.2%。2位が「面倒だから」20.7%。「固定の方法が分からないから」は9.1%しかいません。知識の問題ではなく、日付の問題です。この記事を読んだ日を、その日付にしてください。
防災訓練も同じ構造です。訓練に参加しなかった人の理由の1位は「具体的な日時・場所、申し込み方法が分からないから」38.7%で、「関心や興味がなかったから」17.1%の2倍以上でした。関心はある。案内が届いていないだけです。市町村の広報か、自主防災組織の回覧で日時が分かります。
3日分の備蓄|水は7割、トイレは3割
同じ調査に、家庭で3日分以上備蓄している物を聞いた設問が2025年から新しく入りました。飲料水69.8%、食料品59.8%、衛生用品38.4%、食品を温める熱源27.7%、携帯トイレ・簡易トイレ27.2%、暑さ寒さ対策の消耗品18.6%です。水と食料はできている人が多く、トイレで一気に落ちます。
携帯トイレには地域差があります。東京都区部47.9%、政令指定都市35.1%に対して、町村は17.6%。都市の人ほど備えています。断水しても水を汲みに行く場所がない、という事情の差です(区部は回答121人、町村は148人なので、参考値として見てください)。1人1日5回で3日分なら15回、4人家族で60回です。数の根拠と選び方は非常用トイレおすすめ10選に書いています。
診断に入れなかった数字|火災警報器・ハザードマップ・非常食の地域差
10問は、同じ調査・同じ1,707人の数字だけで組みました。別の調査の数字を混ぜると偏差値の土台がずれるからです。ただ、防災の全体像として知っておくとよい数字が3つあります。
1つ目は住宅用火災警報器で、消防庁の2025年6月1日時点の設置率は全国84.9%です。ただし、条例で義務づけられた場所すべてに付いている「条例適合率」は65.8%。四国では香川県の設置率が77.4%で全国42位、高知県は条例適合率が41.0%で全国最下位でした。付いている家でも、寝室に無い家が多い、ということです。
2つ目はハザードマップで、国土交通省の2021年の調査(ハザードマップがある市区町村の住民1,500人)では、水害ハザードマップを見たことがある人は約7割、見たことがない人は31%でした。見た人の約8割が「避難の判断に役立っている」と答えています。
3つ目は非常用食料の地域差で、厚生労働省の2019年の国民健康・栄養調査では、非常用食料を用意している世帯は全国53.8%。地域ブロック別では関東(東京周辺)が72.3%、南九州が33.1%で、2倍以上の開きがあります。四国は49.0%で全国平均より低い側でした。6年前の数字なので今は動いているはずですが、「西日本ほど備蓄が少ない」傾向は、南海トラフの想定域と重なります。
次に上げる1項目|多くの人がしている物から

偏差値を上げる順番は、計算機が「全国で多くの人がしている物」から並べます。理由は簡単で、実施率の高い項目ほど、道具が安く、やり方が知られていて、今日中に終わるからです。懐中電灯なら寝室に1本置くだけ、食料と水なら2Lの水6本を買うだけで、偏差値は7上がります。
水と食料と携帯トイレの必要量は、家族の人数を入れるだけで出るわが家の備蓄量計算機で確かめられます。何を袋に入れるかは持ち出し袋チェッカー、家族の安否確認と薬と連絡先を1枚にまとめるなら家族の防災カルテがあります。どれも無料で、登録は要りません。
まとめ|平均は2.8項目。5つで上位1割
全国の平均的な人が実施しているのは10項目のうち2.8項目。3項目で偏差値51、5項目で66、上位1割です。いちばん多い懐中電灯でも半数、感震ブレーカーは6%。できていない理由の1位は「先延ばし」で、「方法が分からない」は1割以下。水と食料は7割・6割の人が3日分を持っているのに、携帯トイレは3割です。数字はすべて内閣府の2025年調査のものです。
今日できることを1つだけ。診断で「していない」と答えた項目のうち、いちばん上に出た物を、今日の日付で終わらせてください。懐中電灯なら寝室に1本。水なら2Lを6本。それで偏差値は7上がり、先延ばしの38%から抜けます。
この記事の出典
- 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」(2025年12月確報。全国18歳以上・標本3,000・有効回収1,707人・郵送法)。問4「大地震に備えての対策」、問5・問6(家具固定の程度と理由)、問8「家庭で準備する備蓄」、問16(防災訓練)。比較は同「令和4年9月調査」(有効回収1,791人)
- 消防庁「住宅用火災警報器の設置率等」(2025年6月1日時点)
- 国土交通省「『わかる・伝わる』ハザードマップのあり方について」(2023年4月。2021年8月・1,500人のWeb調査)
- 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」(2019年・2,525世帯)
※偏差値は、各項目の全国実施率から平均と標準偏差を計算した近似値で、項目どうしが独立という前提を置いています。内閣府の調査結果は編集・加工して使用。この記事は2026年9月8日時点の公的資料をもとに書いています。

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