寝室の防災|夜中の地震で、けがをするのは玄関までの数メートル

地震は昼間だけ起きるものではありません。

阪神淡路大震災は午前5時46分、東日本大震災は午後2時46分、能登半島地震は午後4時10分。夜中に起きた大地震も、過去に何度もあります。

寝ているときに揺れたら、まず何が起きるか。そこから考えます。

けがの多くは「割れたガラスを裸足で踏む」

家が倒れなくても、部屋の中はめちゃくちゃになります。

窓ガラス、食器、写真立て、蛍光灯。それらが床に散らばった上を、暗闇の中、裸足で歩くことになります。寝室から玄関まで、たった数メートルの距離です。

そこで足を切ると、避難所まで歩けません。医療は最初の数日ほとんど機能しません。足を守れるかどうかが、そのあとの行動範囲を決めます。

寝室で見るのは3つだけ

完璧にやろうとすると続きません。今日は3つに絞ります。

1. 倒れてくる位置に、大きな家具がないか

本棚、タンス、食器棚。「倒れたときに、寝ている人の上に来るか」だけを見てください。来るなら、置く場所を変えるのがいちばん確実です。動かせないなら、突っ張り棒や壁への固定金具を使います。

寝室に大きな家具を置かない。これができる家なら、それが最善です。

2. 枕元に灯りがあるか

停電します。スマホは充電が切れているか、飛ばされて見つかりません。枕元に固定された灯りが要ります。

ここで懐中電灯よりおすすめしたいのがヘッドライトです。理由は両手が空くからです。片手が塞がっていると、家族を支えられません。ドアも開けられません。散らばった物をかき分けることもできません。

1,000円台から買えます。ベッドの脚やヘッドボードに、ゴムひもで縛っておくと、揺れても飛びません。

選び方は防災ヘッドライトおすすめ10選|両手が空く灯りにまとめました。

3. スリッパとメガネが、手の届く場所にあるか

スリッパは、底が厚いものにしてください。薄い布のスリッパでは、ガラスは防げません。スニーカーを1足、枕元に置いておく家庭もあります。そのほうが確実です。

メガネがないと何も見えない方は、枕元にケースごと置くのではなく、紐で結んでおくことをおすすめします。揺れでケースごと飛ぶと、暗闇では見つかりません。

枕元セットは、この4つ

まとめると、枕元に置いておくものはこれだけです。

  • ヘッドライト(または懐中電灯)
  • 底の厚いスリッパ、またはスニーカー
  • メガネ(必要な方)
  • ホイッスル

最後のホイッスルは、家具の下敷きになったときのためです。声は数分で出なくなります。ホイッスルなら、力がなくても音が出ます。100円ショップで買えます。

「片付けて」では、家族は動きません

家族の寝室も気になるはずです。特に高齢の親の部屋。

ただ、「片付けて」と言うと、たいてい失敗します。責められたと感じて、そのあと部屋を見せてくれなくなります。

言い方を変えてください。

「私が安心したいから、寝る部屋だけ見せて」

親のためではなく、自分のお願いにする。これだけで反応が変わります。実際にやってみると、拍子抜けするくらいすんなり通ります。

寝室が片付いたら、次は持ち出す物です。枕元に置いておく防災リュックの中身は防災リュック本体おすすめ15選を参考にしてください。

寝ている位置を中心に、部屋を見直す

家具を固定しても、置き方しだいでけがは起きます。物を買い足す前に、今の配置を見てください。

頭は、窓と背の高い家具から離す

強い揺れでは、窓ガラスが割れて室内に飛び散ることがあります。ベランダの窓のすぐ下に頭を向けて寝ている配置は、変えられるなら変えたほうが安全です。動かせない部屋では、窓に飛散防止フィルムを貼るだけでも、床に散る量が減ります。ホームセンターや100円ショップで手に入ります。100円ショップのものは1枚45センチ×90センチほどです。掃き出し窓なら、1枚の窓に数枚必要になります。

家具からの距離は、その家具の高さ以上を目安にしてください。高さ180センチの本棚なら、最低でも180センチ。倒れた勢いで扉が開き、中身が先へ飛び出すこともあるので、それより広く取れるならそのほうが安全です。その距離が取れない部屋では、家具の向きを90度変えて、倒れる先が寝る場所からずれるようにします。

履物は、袋に入れてベッドの下に

枕元に靴をそのまま置くと、2つの問題があります。揺れで転がって見つからないことと、靴の中に破片やほこりが落ちることです。暗い中では、靴の中まで確かめられません。だから、はじめから中に何も入らないようにしておきます。

巾着やレジ袋に入れて口を軽く結び、ベッドの下に置いてください。袋ごと引き出せば、中はきれいなままです。スリッパよりスニーカーをすすめる理由も同じで、かかとが固定されないと、散らかった床では途中で脱げます。ひもを結んだままでも、足を入れるだけで履けるものが向いています。

ドアまでの一直線を空けておく

寝る場所からドアまでの通り道に、荷物やゴミ箱を置かないでください。部屋の内側に開くドアの場合、倒れた物が扉を押さえると、中から開かなくなります。まず自宅のドアがどちら側に開くかを確かめてください。寝る前に床の物を1つどけるだけでも、通れる幅が残ります。

壁に穴を開けられない家での固定

賃貸では、金具を壁にネジ留めできないことがあります。その場合は1つの方法に頼らず、上と下で挟むように重ねます。

  • 突っ張り棒は、壁ぎわのいちばん奥に、左右2本で立てます
  • 天井がやわらかいときは、棒と天井の間に厚めの板を1枚はさみます
  • 家具の前側の下にストッパーを差し込みます(家具を壁側に傾けて、倒れにくくします)
  • 扉や引き出しには開き止めを付けます。中身が飛び出すのを防ぎます

東京消防庁の『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』では、突っ張り棒だけの固定は、震度6強の揺れに対して効果が小さいとされています。だから単体では使いません。同じハンドブックでも、突っ張り棒は下側のストッパー、または粘着マットと組み合わせる形がすすめられています。

そして、家具の上には物を置かないでください。空き箱、扇風機、旅行かばん。どれも固定した家具より先に落ちてきます。ここは道具もお金もいらないので、今夜すぐできます。

子ども部屋と高齢の家族の寝室は、優先が変わる

子ども部屋は「通り道」を最優先に

小さい子は、暗闇と大きな音で動けなくなります。自分で靴を履いて出てくることは、期待しないほうがよいです。大人が迎えに行く前提で考えます。

だから優先するのは、ドアから枕元までを塞がないことです。おもちゃ箱と本棚は、その線から外します。二段ベッドを使っているご家庭では、上の段は、乗り降りする1か所を除いて柵が回っているかを見ておいてください。マットレスを厚いものに替えると、柵の実質的な高さが下がります。マットレスの上面から柵の上まで10センチ以上あるかを目安にしてください。

高齢の家族は「その場で安全」を優先に

起き上がるのに時間がかかる方は、慌てて動くほうが危険です。すぐ逃げる前提より、その場でけがをしない部屋にしておくほうが現実的です。ベッドのそばに、座ったまま履ける靴を置いてください。ベッドの上や周りには、ガラス製の物を置かないでください。この2つだけでも変わります。

夜中にトイレへ立つ動線にも、足元を照らす明かりを1つ足しておくと安心です。防災ヘッドライトおすすめ10選|両手が空く灯りで紹介しているような両手の空く明かりは、杖や手すりを使う方ほど役に立ちます。

最後に、今日のうちにできることを1つ。寝る場所からドアまで、ゆっくり歩いてみてください。足に当たる物があれば、それを今夜どけます。暗闇で通れる幅は、明るいうちにしか確かめられません。

家具を固定している人は全国で37.6%、全部固定できている人は約3%です。自分の位置は防災偏差値の自己診断で確かめられます。

今日できること

今夜、寝る前に自分の寝室を見回してください。

倒れてきそうな家具はあるか。枕元に灯りはあるか。スリッパは手の届くところにあるか。

3つのうち1つでも欠けていたら、それが明日買うものです。全部そろえる必要はありません。1つ埋めれば、今日の防災は成功です。

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