札幌で地震にあったら|札幌駅・すすきの・小樽の動き方と避難場所

札幌駅の南口で、すすきのの交差点で、小樽運河の浅草橋で、大きく揺れた。旅行で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、札幌と小樽の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、北海道・札幌市・小樽市の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。

結論を先に言います。札幌では、地下街が逃げ込む場所です。札幌市の一時滞在施設20施設のうち9つが地下で、さっぽろ地下街オーロラタウン、ポールタウン、札幌駅前通地下歩行空間、地下鉄さっぽろ駅・大通駅のコンコースが並びます。他の街の「地下から出る」をそのまま持ち込むと、逆の動きになります。

私は防災士として、札幌市『第4次地震被害想定』(令和3年8月)、『札幌都心地域帰宅困難者対策ガイドライン』、札幌市『平成30年北海道胆振東部地震 対応検証報告書』、小樽市『地域防災計画 第2編』、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。

3地点の結論|地下に入るか、山へ上がるか

場所 標高 津波 揺れが収まったら
札幌駅前 17.9m 想定の外 駅の直上・直下の一時滞在施設へ。アピア、札幌ステラプレイス、地下歩行空間
すすきの・大通 23.6m / 19.8m 想定の外 真下の地下街へ。オーロラタウン、ポールタウン、地下鉄大通駅コンコース
小樽運河(浅草橋) 2.7m 避難対象地域の中 山側へ。旧堺小学校グラウンドは約255m・標高32.8m

札幌3地点の動き方。札幌駅前とすすきの・大通は地下の一時滞在施設へ、小樽運河は山側へ上がる

標高は国土地理院の数値(2026年9月9日取得)です。一時滞在施設は市の判断で開設されるので、揺れの直後にすぐ入れるとは限りません。開くまでは、いる建物の係員の案内に従い、屋外なら周りの広場で待ちます。札幌市内の津波浸水想定は手稲区手稲山口の一部(人家のない区域)だけなので、津波の話は小樽に限ります。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。

札幌で想定されている地震|冬と夏で被害が2倍違う

札幌市の『第4次地震被害想定』(令和3年8月)は5つの地震を想定しています。被害が最大になるのは月寒断層(M7.2)の冬のケースです。市の原文は「月寒断層の地震では、市街地の約7割で震度6強以上の強い揺れとなる」「市街地の約3分の1で液状化発生の可能性が高くなる」。揺れによる全壊1万3,466棟、液状化による半壊1万7,799棟、避難者(1日後)14万9,853人。停電は直後87万5,236戸、断水は1日後21万1,230世帯です。

同じ地震でも、季節で数字が変わります。冬18時なら約1万5,000棟が全壊、夏なら約7,800棟で冬の2分の1程度。積雪の重さと暖房器具の有無が効いています。

小樽側は別の想定です。小樽市の地域防災計画は北海道留萌沖地震(M7.8)・市内最大震度6強を想定し、最大津波高 約5m、第1波の最速到達は塩谷で21分としています。地点別では、小樽港の津波影響開始時間32分、第1波到達36分、最大遡上高4.55m。計画には、震源がこれより陸域に近いなど条件が違う場合は、示した時間より早く津波が来襲する可能性があると書かれています。

札幌の分かりにくさ|地下街が「逃げ込む場所」に指定されている

地下の一時滞在施設 場所
さっぽろ地下街オーロラタウン 中央区大通西1〜3丁目
さっぽろ地下街ポールタウン 中央区南1条西3丁目〜南4条西3丁目
札幌駅前通地下歩行空間 中央区北3条西3丁目〜大通西3丁目
地下鉄さっぽろ駅・大通駅のコンコース 中央区北4条西4丁目 / 大通西4丁目

札幌は一時滞在施設20のうち9つが地下。2018年は地震から18分で北海道全域が停電した

札幌市の一時滞在施設は令和6年8月現在で20施設。上の表のほか、北1条地下駐車場連絡通路と札幌駅北口地下歩道も地下です。20のうち9つが地下にあります。市の定義は「公共交通機関が広範囲にわたり運行停止となった際に、帰宅することが困難となった人の帰宅が可能になるまでの間、一時的に受け入れる施設」。受入定員の目安は約3.3㎡当たり2人です。

2018年の胆振東部地震でも同じ使い方をしています。札幌市の検証報告書の原文は「観光客向けの避難場所として、わくわくホリデーホール、札幌大通高校、市民交流プラザ、北海道庁別館、中島体育センター、地下歩行空間の6箇所を開設した」。ガイドラインが挙げる受入場所の条件は、天井部等から物が落下するおそれのない場所、暗がりや入り組んだ場所を避けた場所。具体例はビルのロビー・会議室、ホテルのロビー・宴会場、地下歩行空間です。

もう1つ、札幌には他の街にない前提があります。2018年9月6日3時7分の地震から18分後の3時25分、北海道全域が停電しました。一般家庭への送電が終わったのは9月8日0時13分。最大約295万戸が停電しています。この295万戸は北海道全域の数字で、札幌市だけの数字ではありません。市の想定(月寒断層・冬・直後)は87万5,236戸です。

札幌駅前|避難場所より先に、一時滞在施設

地下通路の広い場所で、係の人の案内を聞いて待つ旅行者と安心こちゃん

札幌駅南口付近の標高は17.9mです。地震に対応した最寄りの指定緊急避難場所は、北九条小学校(北区北九条西一丁目・約425m・標高15.6m)、中央中学校(中央区北四条東三丁目・約729m・15.9m)、北ガスアリーナ札幌46(約1,030m・16.5m)。ただし駅で揺れた旅行者が最初に入るのは、この3か所ではありません。駅の直上・直下にアピア、札幌ステラプレイス、札幌駅前通地下歩行空間、地下鉄さっぽろ駅コンコース、札幌駅北口地下歩道があり、いずれも一時滞在施設です。

一斉帰宅抑制の判断基準も公表されています。札幌市内に震度6弱以上の地震が発生した場合、公共交通機関の運行が停止した場合など。ガイドラインは「むやみに帰宅を開始してはいけないこと」「公共交通機関が不通になり徒歩帰宅を余儀なくされる可能性が高いこと」を、はっきり並べています。冬の都心の前提として、初日は「札幌都心部の公共交通機関(JR、地下鉄、バス等)は全線通行止」という数字も置かれています。

すすきの・大通|真下の地下街が受け入れ先

すすきの交差点付近の標高は23.6m、大通公園(西3丁目付近)は19.8mで、3地点で最も高い場所です。地震に対応した最寄りの指定緊急避難場所は、資生館小学校(中央区南三条西七丁目・すすきのから約486m・標高22.4m)と中央小学校(中央区大通東六丁目・約1,318m・18.0m)。

1つ知っておくと迷わないことがあります。大通公園そのものは、国土地理院のデータに地震対応の指定緊急避難場所として出てきません。その代わり、真下にオーロラタウン、ポールタウン、地下鉄大通駅コンコース、さっぽろテレビ塔があり、いずれも一時滞在施設です。大通で揺れたら、公園に立ち続けるのではなく、案内に従って真下か周りの建物に入る。それが札幌の型です。

2018年に震度6弱を観測したのは札幌市東区で、中央区や北区の観測点の値ではありません。ただし市の検証報告書は「札幌市において震度5以上の地震を観測したのは、1923年の統計開始以来はじめてのことであり」と書いています。札幌の人にとっても初めての揺れでした。

小樽運河|山側へ上がる。方向は一択

小樽運河 浅草橋付近の標高は2.7m、北運河寄りで2.5mです。色内・港町・堺町は、小樽市の避難対象地域(津波浸水想定区域及び概ね標高5mまでの地域)に入っています。運河沿いを歩いているときに強い揺れが来たら、逃げる場所を探す場面です。

最寄りの指定緊急避難場所は、いずれも地震と津波の両方に対応しています。旧堺小学校グラウンド(東雲町・約255m・標高32.8m)、稲穂小学校グラウンド(富岡一丁目・約784m・31.1m)、双葉中学校グラウンド(住ノ江一丁目・約1,001m・20.3m)。運河から直線255mで、標高32.8mまで上がれます。小樽は運河から陸側がすぐ坂なので、逃げる方向は山側の一択です。

小樽市の計画は「避難方法は、原則、徒歩避難とする」と書いています。避難可能距離の考え方も載っていて、歩行速度1.0m/秒として(津波到達予想時間−5分)×60で計算します。小樽港の影響開始が32分なら約1,620mが目安で、255mは十分に届く距離です。1つ注意を。いなきたコミュニティセンター駐車場も津波に対応していますが標高10.1mです。運河から逃げるなら、標高の高い旧堺小学校側を先に見てください。

帰れない時|冬の帰宅困難者は約11万6千人

札幌市の想定では、帰宅困難者は夏が約5万4千人、徒歩での帰宅がより難しい冬が約11万6千人です。これに加えて、1日あたり平均で夏約2.9万人・冬約2.2万人の観光宿泊客が市内に滞在していると書かれています。中央区だけで夏2万2,288人・冬5万2,394人。

2018年の実績も記録されています。避難者は9月7日6時に最大1万297人(外国人観光客を含む)、開設避難場所は最大300箇所。課題として「宿泊施設に滞在できなくなった旅行者等が都心に集中したが、一時滞在施設が円滑に開設されなかったため、施設間を何度も移動するケースも生じた」「旅行者を含む帰宅困難者が、避難場所や情報を求めて一部の学校に集中したことにより、地域住民の避難に支障をきたした」と書かれています。その後、市内宿泊施設との協定締結は「取組済」になりました。

観光客が使える情報源|オフラインで開く地図を入れておく

札幌市の防災アプリは「そなえ」です。多言語対応(翻訳機能で複数言語での表示に対応)と、オフライン対応(事前にデータをダウンロードしておくことで、インターネットに接続できない状況でも、地図上に現在地と避難場所を表示)が公式の説明に書かれています。全道が停電した街なので、この機能の意味が他の街より大きい。避難場所の開設状況や気象情報は「さっぽろ防災ポータル」で見られます。

2018年の反省も公開されています。「多言語による案内文を事前に用意していなかったため、掲示板を活用した地下鉄駅における外国人旅行者への情報提供に時間を要した」。改善として、地下鉄の運行情報を日本語と同じタイミングで多言語でも出す取組が挙げられています。小樽側は市のハザードマップに地区別の津波ハザードマップがあります。

持ち物と、今日できること

札幌で待つ時間に要るのは、電源、灯り、防寒、トイレ、書類の袋です。2018年に起きたのは街全体が暗くなることでした。冬なら、そこに寒さが足されます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。

今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。札幌ではもう1つ、防災アプリ「そなえ」を入れて、地図データを先にダウンロードしておいてください。停電して電波が弱った街では、これが効きます。

この記事の出典

  • 札幌市『第4次地震被害想定』(令和3年8月)、札幌市『札幌都心地域帰宅困難者対策ガイドライン』(平成30年3月)
  • 札幌市『一時滞在施設』(2026年3月6日更新・令和6年8月現在の20施設)、札幌市『津波関連』(2024年2月15日更新)、札幌市防災アプリ「そなえ」、さっぽろ防災ポータル
  • 札幌市『平成30年北海道胆振東部地震 対応検証報告書』(平成31年3月)、電力広域的運営推進機関『大規模停電に関する検証委員会 最終報告』(2018年12月)、内閣府『令和元年版 防災白書』
  • 小樽市『地域防災計画 第2編 大規模震災対策(地震・津波)』、北海道『日本海沿岸の地震・津波被害想定』(令和7年6月3日公表)、小樽市ハザードマップ
  • 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(札幌市分 2026年2月10日更新・小樽市分 2026年1月8日更新)、標高API(2026年9月9日取得)

※避難場所の指定・一時滞在施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月11日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と札幌市・小樽市の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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