横浜で地震にあったら|横浜駅・みなとみらい・中華街の避難場所

横浜駅の地下通路で、みなとみらいの高層階で、中華街の善隣門の前で、大きく揺れた。旅行で来た人が最初に迷うのは「どこへ逃げるか」です。この記事は、横浜の3つの場所について、揺れた直後の1時間に何をするかを、神奈川県と横浜市の公式の資料から書いたものです。旅先で地震にあった時の共通の動き方は旅行先で地震にあったらの記事にまとめています。

結論を先に言います。3か所とも津波の避難対象区域に入っていますが、やることは3通りに分かれます。横浜駅は帰ろうとしない、みなとみらいはいる建物から出ない、中華街は高い所へ動く。そして神奈川県は令和7年3月の被害想定で、はじめて観光客を帰宅困難者の数に入れました。横浜市の観光客の帰宅困難者は11万6,010人です。

私は防災士として、神奈川県地震被害想定調査(令和7年3月公表)と津波浸水想定、横浜市『津波からの避難に関するガイドライン』、横浜駅周辺地区とみなとみらい21地区の都市再生安全確保計画、横浜市の帰宅困難者一時滞在施設の一覧、国土地理院の指定緊急避難場所データと標高を読んでこの記事を書きました。

3地点の結論|動くか、待つか

場所 標高 津波の避難対象区域 揺れが収まったら
横浜駅 3.6m 入る(西区 南幸・北幸・高島ほか) 帰ろうとしない。駅の外の広い場所で待つ。警報が出たら駅の北から西の高台へ
みなとみらい(ランドマークタワー) 4.4m 入る(みなとみらい一・二・五・六丁目) 動かない。いる建物がそのまま避難先になる
横浜中華街(善隣門) 1.2m 入る(中区 山下町) 動く。ただし「遠く」ではなく「高く」。港中学校(約223m)の上階か、山手の丘

横浜3地点の動き方。横浜駅は帰ろうとせず駅の外で待つ、みなとみらいはいる建物の中、中華街は高く動く

標高は国土地理院の数値(2026年9月16日取得)、区域の判定は横浜市『津波からの避難に関するガイドライン』別紙2「避難対象区域が含まれる町丁一覧」です。みなとみらいは一・二・五・六丁目が一覧にあり、三丁目と四丁目は載っていません。ひとまとめにして覚えないでください。距離は、この記事ではすべて直線距離で書きます。

横浜で想定されている地震|観光客が、はじめて数に入った

神奈川県は令和7年3月に被害想定を新しくしました。横浜が主役になるのは都心南部直下地震(Mw7.3)で、横浜市・川崎市を中心に震度6強。このとき横浜市の全壊は16,180棟、死者530人。もう1つの大正型関東地震(Mw8.2)では全壊104,420棟、死者5,000人と、桁が変わります。

今回の調査で変わったのは、数え方です。県は前回まで通勤・通学者だけで帰宅困難者を推計していましたが、今回は入込観光客調査にもとづいて観光客を加えました。被害想定の項目名そのものが「帰宅困難者(観光客を含む)」になっています。横浜市の発災直後は39万4,360人。内訳は通勤・通学者27万8,350人と観光客11万6,010人です。旅行者は、県の資料の中に数として存在しています。

津波は、神奈川県の中でも横浜だけ性格が違います。県の津波浸水想定で、神奈川区・西区の最大波の到達は128分、中区は126分。同じ県でも大磯町は3分、鎌倉市は10分です。東京湾の奥だから、横浜は時間がかかります。2011年3月11日の実測もあります。横浜津波観測施設で第一波が16時10分に82cm、最大波が17時38分に155cm。地震発生(14時46分)から約2時間52分後です。ただし県は「表に示す最大津波到達時間より前の津波によって、浸水を生じることがあります」と注意書きを付けており、横浜市の計画は別のモデルで横浜駅周辺の到達を75分と見ています。時間があるから安全、という話ではありません。

横浜の分かりにくさ|地図に出てくる避難場所が、全部ではない

呼び名 何のための場所か 決める人
一時(いっとき)避難場所 安否確認と周りの状況確認のために集まる場所 自治会・町内会。市の一覧はない
地域防災拠点 避難生活を送る場所。市内の小中学校等459か所 横浜市
指定緊急避難場所 切迫した危険から逃れる場所。地域防災拠点から選ぶ 横浜市
広域避難場所 大地震の延焼火災の熱と煙から身を守る場所 横浜市
津波避難施設 津波のときに緊急に逃げ込む施設 横浜市と施設の協定

横浜の避難場所は5つの呼び名。国土地理院のデータに載る津波の避難場所は学校だけで、実際の津波避難施設は民間99件と公共90件

横浜でいちばん役に立つ事実がここにあります。市の説明によると、災害種別「津波」の指定緊急避難場所は「本市が津波避難施設に指定している施設のうち地域防災拠点を指定」しています。つまり国土地理院のデータに出てくる津波の避難場所は、学校だけです。実際の津波避難施設は民間99件と公共90件あり、ホテル・立体駐車場・ペデストリアンデッキまで含まれます。地図アプリに出ないから逃げ場がない、ではありません。

避難の目安も市が決めています。「①海抜5m以上の高台又は②鉄筋コンクリート若しくは鉄骨鉄筋コンクリート造の頑丈な建物の3階以上」、そして「『遠いところ』ではなく、『高いところ』へ避難することを心がけてください」。地下については「地下街や地下室などは、浸水するおそれが高いため」速やかに近くのビルの上階や高台へ、と書かれています。横浜駅の東西には地下街があります。津波の場面で、地下は逃げ場になりません。

横浜駅|帰ろうとしない。高台は北から西

横浜駅の標高は3.6m。6社9路線が乗り入れ、一日約190万人(令和4年度時点)が乗り降りする駅です。市の計画では、この地区の滞留者は平日14時台で最大約10.4万人、帰宅困難者は平日13時台で約3.3万人。地震に対応した最寄りの指定緊急避難場所は横浜市立青木小学校(神奈川区桐畑・約884m・標高22.4m)で、市の計画にある「駅の北側から西側にかけて津波発生時でも浸水しないと予測されている高台があり」という記述と方向が一致します。

歩いて帰らないでください。横浜市はこう書いています。「歩道上は、満員電車状態で、1時間に400mしか進めない場所も出てきます。」駅の周りには帰宅困難者一時滞在施設があり、JR横浜タワー、日産自動車グローバル本社、西公会堂、横浜市民防災センターなどが一覧に載っています。ただし市の但し書きも同じページにあります。「施設の開設準備が完了され次第開設されるため、災害時に必ず開設されるわけではありません」「ホテル等宿泊施設にもご協力をいただいておりますが、施設が指定するロビーなど、人が一時的に滞留できる場所の開放になります」。開くまでは、駅の外の広い場所で待つ場面です。

みなとみらい|動かない。いる建物が、そのまま避難先

ランドマークタワー付近の標高は4.4m。この地区は、市の計画で少し変わった位置づけをされています。原文はこうです。「大規模地震時に広域避難場所等への避難を必要としない『大規模延焼火災の恐れが低い地域』として指定される」「大規模地震が発生しても建物倒壊や人的被害は限定的と考えられる。しかしながら交通機関の停止等の影響により、帰宅できずに当地区に留まる多数の帰宅困難者の発生が懸念される」。火から逃げる場所が割り当てられていないのは、燃えにくい街として作られたからです。

受け皿も、建物そのものです。横浜ランドマークタワー、パシフィコ横浜、クイーンズスクエア横浜、MARK IS みなとみらい、横浜美術館、Kアリーナ横浜などが帰宅困難者一時滞在施設。パシフィコ横浜とヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルは津波避難施設でもあり、24時間365日の受け入れです。ただし数は足りていません。地区の計画に「一時滞在施設は27施設、収容人員の合計は約1.7万人」「平日の支援を要する帰宅困難者数約2.2万人に対して77%で0.5万人不足しており、休日の…約2.5万人に対しては68%で0.8万人不足する」と書かれています(令和5年1月現在。その後に新しい施設が増えています)。休日について、計画は「大半が買物客や観光客等の来訪者であり」とも書いています。どの建物に入るかを、先に1つ決めておきます。

横浜中華街|遠くではなく、高く

商店の並ぶ通りから、丘の方向へ坂を上がる安心こちゃんと旅行者

善隣門の標高は1.2m。3地点でいちばん低い場所です。中区山下町は津波の避難対象区域に入っています。津波に対応した最寄りは横浜市立港中学校の体育館(山下町241・約223m・標高2.2m)ですが、標高2.2mが避難先になるのは、市の目安の②「鉄筋コンクリート造等の3階以上」にあたる建物だからです。海抜5m以上の高台にあたるのは、直線約782mの元街小学校(山手町・標高31.0m)の側、つまり山手の丘です。

山下町には、地図アプリに出てこない避難先が並んでいます。市の津波避難施設の一覧には、山下町だけでエスカル横浜、ダイワロイネットホテル横浜公園、ホテルJALシティ関内横浜、ホテルニューグランド、産業貿易センタービル、港中学校などが挙がっています。多くが24時間365日ですが、9時から21時、8時から20時と、受け入れの時間が施設ごとに違います。泊まっているホテルが、そのまま津波避難施設になっている場合があります。山手の丘の上には、アメリカ山ガーデンアカデミーと山手迎賓館が帰宅困難者一時滞在施設として一覧にあります。中華街だけは、高い所と帰りを待つ場所が同じ方向に重なります。

帰れない時|備蓄の3日分は、従業員の分

横浜市の一斉帰宅抑制のページには、注釈が付いています。「従業員等…事業所内で業務に従事するもの(雇用形態は問わない)は含むが、来所者は含まない」。よく聞く「3日分の備蓄」は、まず従業員の分です。国のガイドライン(令和8年1月)は、来客者のために「例えば、10%程度の量を余分に備蓄する」と書いています。旅行者の分は、1割の予備として計算されています。

同じガイドラインの用語定義には、「行き場のない帰宅困難者」の例として「観光客、買い物客」がそのまま書かれています。コンビニなどが水道水とトイレを出す災害時帰宅支援ステーションが動くのは、発災3日後が目安です。すぐ誰かが助けてくれる前提では書かれていません。

観光客が使える情報源|通路に9枚、街に53基の板

横浜市は、浸水予測区域のうち人が多く訪れる場所に「津波避難情報板」を53基設置しています。載っているのは周辺地図、浸水区域、海抜、避難の方向、津波避難施設。横浜駅では、きた通路2か所・駅周辺4か所・みなみ通路3か所の計9基。中華街側は元町・中華街駅の出入口、山下公園に2基、港中学校に2基です。海抜標示についても市は「市民の皆様や観光客の皆様が」と観光客を名指ししています。スマホの電池を使わずに読める情報が、街の柱に貼ってあります。

持ち物と、今日できること

横浜で待つ時間に要るのは、電源、灯り、トイレ、水の入れ物、書類の袋です。津波の到達に2時間前後かかる街では、走るための靴より、待つための羽織る物と電源が先に効きます。旅行のかばんに入る7点は旅行の防災ポーチの記事で選んでいます。

今日できることを1つだけ。行く前に、泊まる場所のいちばん近い指定緊急避難場所を1つ、地図アプリに保存しておきます。1分で終わります。横浜では保存するときに、その場所の標高を一緒に見てください。海抜5mに届かない場所なら、それは「上に上がるための建物」です。泊まる建物が津波避難施設になっているかも、フロントで一度聞いておくと確かです。

この記事の出典

  • 神奈川県『地震被害想定調査報告書』概要版・簡易版・資料1 市区町村別被害想定結果一覧(令和7年3月公表)、同『津波浸水想定について(解説)』(平成27年3月31日公表・平成27年6月22日一部修正)
  • 横浜市『津波からの避難に関するガイドライン』(第3版)、同『津波避難施設一覧』(民間 令和8年7月31日現在・公共 令和8年6月24日現在)、同『津波避難情報板』
  • 横浜市『帰宅困難者一時滞在施設について』(2026年9月1日更新・一覧は令和8年6月18日時点)、同『一斉帰宅の抑制』『帰宅困難者にならないために』
  • 横浜市『横浜駅周辺地区 都市再生安全確保計画』(令和6年2月改定)、同『みなとみらい21地区 都市再生安全確保計画』(2023年2月改定)、同『横浜市の災害 平成23年』
  • 内閣府(防災担当)『災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン』(令和8年1月)
  • 国土地理院「指定緊急避難場所データ」(横浜市分 2026年1月16日更新)、標高API(2026年9月16日取得)

※避難場所の指定・一時滞在施設・被害想定は更新されます。この記事は2026年9月16日時点の公的資料をもとに書いています。現地では、いる施設の係員と横浜市の案内を優先してください。距離は直線距離で、歩く時間ではありません。標高は国土地理院の数値で、建物の高さではありません。

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