避難所で「それ、ちょうだい」と言われたら|家族を守るための優しい断り方【防災士が解説】

避難所で「それ、ちょうだい」と言われた時、
無理に分ける必要はありません。
大切なのは、相手を否定せず、でも家族の命を守ること。
実は、言い方を少し変えるだけで、角は立たずに断れます。
そのための「魔法のフレーズ」と、そもそも困らないための備えをお伝えします。


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避難所で実際に起こる「くれくれ問題」

避難所では、普段なら何でもない物が命に直結する貴重品になります。

  • 「マスク、少しだけ分けてもらえない?」
  • 「そのお菓子、うちの子が欲しがってて…」
  • 「カップ麺、余ってない?」

断ったら冷たい人と思われそう。
でも分けたら、家族の分が足りなくなる。

このジレンマ、想像以上につらいです。
そしてこれは、誰にでも起こり得る現実です。

なぜ、断るのがこんなに苦しいのか

  • 非常時なのに断っていいの?
  • 周りの目が気になる
  • 噂になったらどうしよう
  • これから長く一緒に過ごすのに…

でも、忘れないでください。
一番守るべきは、あなたと家族の命です。

日本人は「助け合い」をとても大切にする文化があります。
だからこそ、避難所ではこんな気持ちが生まれます。


これなら言える「魔法の断り方」

防災士としておすすめするのは、
感情をぶつけない・理由を短く・同じ言葉を繰り返すこと。

魔法のフレーズ①

「ごめんなさい、家族の分だけしか持っていないんです」

→「家族のため」という理由は、誰もが理解しやすい。
後ろめたさを感じる必要はありません。


魔法のフレーズ②

「私たちも本当にギリギリで…少しでもお分けできたらよかったのですが」

→ 相手の気持ちに寄り添いつつ、現状を伝える。
「分けたい気持ちはある」ことが伝わります。


魔法のフレーズ③

「よかったら、一緒に支援物資の確認に行きませんか?」

→ 断りつつも、行動で助けるスマートな方法。
相手の印象は「冷たい人」ではなく「一緒に動いてくれる人」に変わります。


しつこい場合の鉄則

  • 感情的にならない
  • 言い訳を増やさない
  • 同じフレーズを淡々と繰り返す

これだけでOKです。
説明を変えるほど、話はこじれます。


それでも続くときは、当人どうしで解決しません

同じ言葉を繰り返しても収まらないときは、避難所の運営をしている方に相談してください。自治会の役員さん、行政の担当者、運営委員会の方です。

理由は2つあります。1つは、当人どうしのやりとりにすると、そのあと何日も同じ場所で顔を合わせ続けることになるからです。もう1つは、同じことで困っている人が、ほかにもいるからです。個人の我慢で処理すると、その人だけが繰り返し頼まれる側になります。運営に上がった話なら、物資の配り方そのものを見直せます。

言い方は「あの人が困ります」ではなく、自分を主語にします。「何度か頼まれていて、うちの分の見通しが立たなくて困っています」。これなら誰も責めずに事実だけが伝わります。

分けられる物と、分けられない物があります

断りにくさの正体は、たいてい「どこまで分けていいのか分からない」ことです。ここを先に決めておくと、その場で迷わなくなります。

少しなら分けられる物

水、そのまま食べられる食料、カイロ、ウェットティッシュ。これらは1回分けても、自分の家族の日数がほとんど変わりません。1本、1袋なら渡してしまったほうが、あとの空気がずっと楽になります。

分けると、自分の日数が直接減る物

非常用トイレです。これだけは使える回数がはじめから決まっていて、分けたぶんだけ自分の家族が使える日数が短くなります。

内閣府のガイドラインでは、1人が1日に使う回数を5回として計算します。4人家族が7日間なら140回です。ここから10回渡すと、単純に半日分が減ります。「余っていたら」ではなく「何回分あるか」で考える物だと知っておいてください。

出典:内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(排泄の回数は5回が平均的であるとされ、必要な便袋の枚数を「人数×5回×日数」で算出しています)

この線引きがあるだけで、断り方が変わります。「これは分けられます」「これは回数が決まっているので、うちの分で精一杯なんです」と、物ごとに答えられるようになります。全部まとめて断るより、ずっと角が立ちません。

そもそも「困らない」ための最大の対策

一番の解決策は、
最初から「分けなくていい状況」を作ること。

  • 非常食・水:最低3日、できれば1週間分
  • 非常用トイレ:本当に後回しにされがち
  • ウェットティッシュ・衛生用品:避難所では即不足

そして意外と大事なのが、
防災グッズを見せびらかさないこと。

  • 中身が見えない袋に入れる
  • 必要な物だけサッと出す

これだけで、トラブルはかなり減ります。


言われる前にできることが、3つあります

断り方を覚えるより、そもそも頼まれにくくしておくほうが楽です。避難所に着いてからできることを3つだけ。

  1. 袋の中身が見えないようにする。透明な袋やレジ袋のままだと、何をどれだけ持っているかが分かります。中身の見えない袋に移すだけで変わります
  2. 出すときは、その場で使う分だけ。箱ごと開けて広げると、余っているように見えます。1回分ずつ取り出して、残りはしまいます
  3. 「渡す用」を先に分けておく。非常用トイレなら10回分、飲み物なら1本。別の袋に移して「渡す用」と書いておくと、頼まれたときに数えずに渡せます

3つめは、断るためではなく気持ちよく渡すための準備です。渡す分をあらかじめ決めておくと、その場で「どこまで渡すか」を考えなくて済みます。迷っている時間がいちばんつらいので、そこを先に済ませておきます。

今日できること、1つだけ

持ち出し袋の非常用トイレを10回分だけ別の袋に移して、油性ペンで「渡す用」と書いてください。それだけです。

数が見えていると、その場で判断できます。判断できると、断ることも渡すことも、どちらも角が立たなくなります。

特に「頂戴」と言われやすい防災グッズ

これらは、自分で備えておくことが最大の思いやりです。
備えがある人ほど、心に余裕が生まれます。

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