実家の防災、親と喧嘩しない伝え方|「片付けて」が失敗する理由

離れて暮らす親の家が心配。だから帰省したときに防災の話をした。そうしたら、なぜか空気が悪くなって終わった。

こういうご相談は本当に多いです。原因は、伝え方にあります。

「片付けて」は、なぜ失敗するのか

親にとって、その家は何十年も暮らしてきた場所です。

物の配置には、その人なりの理由があります。手が届く高さに置いてある。動線に合わせてある。あるいは、思い出があって捨てられない。

そこへ「危ないから片付けて」と言うと、伝わるのは危険性ではありません。「あなたの暮らし方は間違っている」というメッセージです。

だから反発されます。そして次からは、部屋を見せてもらえなくなります。防災の話ができる関係そのものを失うほうが、家具が固定されていないことより損失が大きいです。

主語を「私」に変える

うまくいく人は、言い方が違います。

失敗しやすい言い方通りやすい言い方
「危ないから片付けてよ」「私が安心したいから、寝る部屋だけ見せて」
「これ、賞味期限切れてるよ」「これ今日のお昼に食べちゃおう。帰りに新しいの買っておくね」
「ちゃんと薬飲んでる?」「お薬手帳、どこに置いてるか教えて」
「避難場所わかってるの?」「私が知らないから、一緒に確認させて」

違いは1つだけです。親のためではなく、自分のお願いにしている。

「あなたが心配だ」は、受け取る側からすると「あなたは頼りない」と同じ意味になります。「私が安心したい」なら、誰も否定されません。頼まれごとになるので、親のほうが動きやすくなります。

決めるのは本人。家族は手伝うだけ

もうひとつ大事なのが、決定権を渡すことです。

薬をうまく飲めていない親に、良かれと思ってお薬カレンダーを作った。飲み方を説明した。結果は喧嘩だった。こういう話もよく聞きます。

うまくいくのは、聞き方を変えたときです。

「ちゃんと飲んで」ではなく「どうしたら飲めそう?」

本人に決めてもらう。家族は、本人が決めたやり方を手伝う。防災も同じです。「この棚は危ないから動かそう」ではなく、「地震のとき、この棚どうなると思う?」と聞く。自分で気づいたことは、人から言われたことより残ります。

帰省のときの順番

初日はやらない。

これがいちばん大事です。親にとって帰省は、うれしくて、少し疲れるものです。着いた日は本当にうれしそうに出迎えてくれます。その日に押し入れを開け始めると、確実に空気が壊れます。

初日は顔を見せて、一緒にごはんを食べる。それだけでじゅうぶんです。

チェックは2日目以降に、買い物や片付けの「ついで」にさりげなく。「ちょっと押し入れ借りるね」の流れで見る。改まって「今から防災チェックします」とやらないことです。

物を渡すときも、押しつけない

防災グッズを買って持っていくのは良い方法です。ただし、渡し方があります。

「これ使って」ではなく、「私が使ってみて良かったから、同じの買ってきた」

自分が良いと思ったものをおすそ分けする形にすると、受け取りやすくなります。押し付けられた感じがしません。

手土産にちょうどいいのは、枕元のライト(1,000円台)、温度計(数百円)、携帯トイレ数回分あたりです。大きいものは置き場所に困らせるので避けます。

まとまった備えを渡したいなら、リュックごと持っていく方法もあります。中身の考え方は防災リュック本体おすすめ15選にまとめています。

完璧を目指さない

帰省の目的は、チェックを全部終わらせることではありません。

「また来てね」と言ってもらえる関係のまま、備えが1つ進めば、それでじゅうぶんです。

5つ全部やろうとして関係が悪くなるより、1つだけやって次も見せてもらえるほうが、長い目で見て親は守られます。

今日できること

次の帰省で「何を1つだけやるか」を決めてください。

寝室を見せてもらう。お薬手帳を撮らせてもらう。ご近所さんに挨拶する。どれか1つで構いません。1つに絞ると決めた時点で、その帰省は成功します。

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